脱サラし起業、「妻への説明には苦労しました」

こうして児玉さんの強い思いから生まれたカチモードだったが、まったく未開拓の道。

「なにせ、日本にいままでなかったビジネスを立ち上げようとしていて、しかもそれが『オバケ調査』ですから、妻への説明には苦労しました(苦笑)。打ち明けたとたんに家族会議が開かれ、まるで国会質疑みたいに妻からの問いにひとつひとつ丁寧に答えていきましたよ」

無事に家族の了承を得られたものの、まだどのようにオバケがいないことを証明するかなど、具体的な方法は暗中模索。幽霊が出るというイギリスの城を調査するというテレビ番組を参考にしつつ、独学で機材を集めていく。

取材を受ける児玉さん
筆者撮影
「1年半で結果が出なければ普通の会社にしてほしい」という妻からの意見もあったという。無事に成長して今のカチモードがある

2022年12月、事業開始。

「見切り発車でしたよ」と笑う児玉さんだが、いざ始めてみると、カチモード独自の調査スタイルが確立されていった。さまざまな縁が繋がっていき、こういった異常現象を研究する大学教授や物理学の専門家など、各分野のプロフェッショナルに協力してもらえる体制も整ってきているという。

「とある調査物件で、人が亡くなった位置に近い壁から冷たい風が吹いてくるという現象があったんです。風力計を使っても反応がない。けれど、肌には確かに風を感じる。物理学の先生に相談してみると、『それ気圧が違うのかもしれないよ』と。気圧の変化が部屋の中で起こって、風が吹いているように感じている可能性がある。じゃあなぜ気圧が違うのかという話になり、原因究明へと近づいていったこともありましたね」

調査中の物件の様子
筆者撮影
調査中の物件の様子
機材を配置する児玉さん
筆者撮影
自身でもYouTubeチャンネルを運用する児玉さんは、語りが巧みで引き込まれてしまう

不動産マン時代から収入は半減

バリバリの不動産マンから、「オバケ調査員」への転向。収入でいえば現状は会社員時代から半減してしまっている。

前述したとおり調査は1案件につき8万円(税抜)。

調査員1人が1日の稼働で8万円と考えると割のいい仕事に思えるかもしれない。しかし、事故物件に泊まった後に各機材のデータを確認するといった地道な作業に数日はかかり、証明完了まで5日間ほど要するそうだ。

そう考えるとコストパフォーマンスがいいとは言えない、むしろコスパが悪い事業に感じる。

「いまはまだオバケ調査という未知なる事業を世間に周知していくフェーズなんですよ。認知度を高め、実績を積み、カチモードになら任せられるという信頼を得ていけば、ビジネスの展開の仕方も変えていけるし、もっと効率的にマネタイズできるようになっていくと考えています」

最近ではYouTubeなどの様々なメディアで発信をしている
児玉さんの著書『告知事項あり。』
児玉さんの著書『告知事項あり。』(主婦の友社)

児玉さんはYouTubeやテレビ番組といった様々なメディア出演やイベント登壇を通して、事故物件に関わる人々との交流を活発に広げている。

2024年には事故物件サイトを運営する大島てるさんとYouTube対談を行っているし、不動産マン時代からの自身の体験談をもとにした書籍『告知事項あり。』も出版。

昨年にはこの著書が実写ドラマ化され話題も呼んでいる。「オバケ調査員」としての児玉さんの名前は確実に知られてきているのだ。