香港の民主化運動を抑え込む「国家安全法」の施行が焦点に
沙鴎一歩が22日に始まった全人代で心配なのは、国家分裂や中央政府の転覆を狙う活動を禁じる「国家安全法案」の審議が行われていることである。習近平政権は香港で輪が大きく広がっている民主化運動をこの法案を使って直接、抑え込もうと画策している。
法案では国家安全に危害を加える行為・活動を強制力によって防止できる。処罰も可能となる。中国の国家安全当局が香港に出先の機関を設けることもできるようになる。中国政府が香港政府に代わって主導権を握り、強権を発動するわけだ。法案が可決されると、全人代常務委員会が具体的な法律を制定した後、香港で施行される。
決して国家安全法を成立させてはならない。国際社会は香港の民主化を支えるべきである。とくに中国ににらみが利くアメリカは、あらゆる国際的な手段を駆使して中国に圧力をかけるべきだ。
沙鴎一歩も香港の民主化運動にエールを送る。香港の運動が習近平政権の野望を打ち砕く唯一の防波堤だからだ。
22日の全人代では王晨(ワン・チエン)常務副委員長が、制度案の説明を行った。その説明の中で王氏は香港で立て続けに起きている民主化運動のデモを批判し、香港の安定と国家安全が「無視できない危機に直面している」と語った。今年9月には香港の議会に相当する立法会の選挙が行われる。
習近平政権はその前に民主化運動を抑えておきたいのだ。現在の立法会選挙制度は、中国側に有利な構造になっているが、それでも民主化勢力が初の過半数を獲得する可能性が高いとみられ、中国・香港政府に危機感を抱かせている。
「天安門事件」の悲劇だけは繰り返してはならない
その香港では24日、国家安全法案に反対するデモが行われた。デモは今年1月に新型コロナウイルスの感染が拡大し始めて以来、最大規模となった。市民や学生にインターネットで呼びかけ、香港政府の許可なしで行われた。香港警察は不法な集会で、集会を禁じた感染予防対策にも違反すると判断し、催涙弾や放水車を使って取り締まり、180人以上の市民が身柄を拘束された。
「国家安全法案」は28日に全人代で可決される見通しだ。香港の民主化運動がこれを阻止できるかが、注目されている。
中国政府は国家安全法が成立して香港で施行された場合、さらに強硬な手段を取ることが予想される。民主化候補から立候補の資格が次々と取り消されるような事態が起こる恐れもある。言論の自由が厳しく統制され、民主化要求運動が武力弾圧され多くの犠牲者を出した1989年6月の天安門事件のような悲劇もあり得る。
これまでにも沙鴎一歩は強く訴えてきたが、天安門事件の悲劇だけは繰り返してはならない。日本をはじめとする国際社会は香港をしっかり監視する必要がある。