コロナ危機でも国防予算を高い水準に保つ中国の異常さ

5月23日付の朝日新聞の社説は、全人代で公表された中国の今年度の国防予算案の増大に警鐘を鳴らす。見出しも「中国の国防費 危うい軍拡いつまで」である。

「前年実績比6.6%増の1兆2680億元(約19兆1700億円)。伸び率は前年比0.9ポイント減だが、依然として高い水準にある。米国に次ぐ世界第2位の規模は変わらず、日本の防衛予算の4倍弱に上る」
「詳細な内訳は非公表であり、中国軍が何をめざすのか、よく分からない。少なくとも『軍民融合』の強化方針のもと、人工知能やサイバー、衛星利用といった新たな技術分野の開発も推進されていると伝えられる」

コロナ危機で中国の経済力も弱っている。全人代で経済成長率目標も示せず、ライフラインなど公共サービスの予算が大きく削られた。にもかかわらず、国防費だけは高く維持する。異常な国だ。国民の生活よりも国家の維持と繁栄、世界制覇の実現なのである。

「世界の不確実性の高まりは中国にとっても深刻な脅威」

朝日社説は強く訴える。

「中国から見れば、米国との対立などを受けた安全保障上の懸念が強まっている、との意識が強いのかもしれない」
「だが、力による問題解決や一方的な現状変更に踏み出せば、国際社会全体の安定が損なわれる。世界の不確実性の高まりは中国にとっても深刻な脅威であることを自覚するべきだ」
「中国がなすべきは、自ら率先して米国やロシアなどを巻き込む軍縮を始めることだ。軍拡を続ける限り、『平和的発展』の言葉を世界は信じない」

中国が安全保障の問題を心配するのは分からなくもない。自国第一主義が幅を利かせ、それが批判される時代、中国のような一党独裁国家の在り方も厳しく問われる。だが、中国は国際社会の安定に目を向けてほしい。それができなければ、一人前の国家とはいえないし、大きな国には成長できない。

新型コロナウイルス禍で世界中が絶望の危機にさらされているいまだからこそ、世界各国が協力し合う必要がある。それが「連帯」である。