世界的にベストセラーになった『ファクトフルネス』の隠された秘密

世界的にベストセラーになった『ファクトフルネス』の隠された秘密は、人類の社会、経済についてのさまざまな変化、データを目に見える形で表示できるようにしたことだろう。

同書の著者、ハンス・ロスリングは本の完成を待たずに2017年に他界。彼なら今、世界に向けてどんなメッセージを発するだろうか。
TT News Agency/時事通信フォト=写真
同書の著者、ハンス・ロスリングは本の完成を待たずに2017年に他界。彼なら今、世界に向けてどんなメッセージを発するだろうか。

人間の脳は、さまざまな認知バイアスにとらわれやすい。世界の現状や、自分を取り囲む状況をありのままに見ること、とりわけ、たくさんのデータが並列しているような状況で、それをすべて平等に、注意が隅々まで行き渡るような形で気配りするのは難しい。

世界が複雑になり、仕事や生活で関わることが多くなればなるほど、関係する事実をすべて押さえるのが困難になる。それでも、関連する事項全体に注意を向けなければ、質の高い判断を下すことも、適切な行動をとることも難しい。「木を見て森を見ず」では、現代で活躍できる人にはなれない。

だからこそ、「視覚」に訴えることが有効になる。脳に入る情報の経路の中で、視覚は最も並列的にものを捉えることが得意な感覚である。だからこそ、『ファクトフルネス』で世界の現状、変化を視覚化する試みをしていることが重要なイノベーションとなった。