「悩むだけで前に進めない人」の勘違い

脳科学者という仕事柄、さまざまな相談事や、悩み事を持ちかけられることがある。

コロナ禍で増えた在宅時間。ただボーっと過ごしているだけでは、悩みの解決を助ける行動や学習を蓄積できない。
PIXTA=写真
コロナ禍で増えた在宅時間。ただボーっと過ごしているだけでは、悩みの解決を助ける行動や学習を蓄積できない。

もちろん真剣にお聞きして、誠実にお答えするけれども、その中でどうしても気づいてしまうことがある。

すなわち、意味もなくあれこれと悩んでいる人が多すぎるのである。すべての悩みに意味がないというのではない。ただ、世の中には、生きるうえで助けになる悩みとあまり助けにならない悩みがある。その違いを知ることは決定的に重要である。

人間は、自分の生き方や進路に迷うことがある。そのようなときには、脳の「ディフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる回路が活性化して、さまざまな「出口」を探し出そうとする。この回路は、具体的な課題をこなしているときではなく、いわば「白昼夢」のようにあれこれと迷い、想像しているときに働くことが知られている。

しかし、ここで肝心なのは、ディフォルト・モード・ネットワークがきちんと働くためには、具体的な行動や学習の積み重ねがないといけないということである。肝心のリアルな体験がないと、悩みの素材もないのだ。