石原慎太郎を追い出した、維新の荒々しさ

思い出すのは、2014年3月のことだ。当時、日本維新の会の共同代表だった石原氏は自ら会長を務める党エネルギー調査会で、原発輸出を可能にする原子力協定への党の反対方針に従わない姿勢を明言し、「高校の生徒会のやり方だ」と批判した。これに「大阪系」の浦野靖人衆院議員が「反対なら党から出ていったらよろしい」とかみつき、他の大阪系議員も「出ていけ」と非難したことがある。「都知事まで務めた年長者を口汚くののしるのは失礼だ」との声も漏れたが、石原氏ら「スター選手」から学べるところは学ぶ一方で、政策的に譲れない一線では相手が誰であろうと徹底的に戦う分かりやすさが熱狂的な「維新信者」と呼ばれる人々を生んでいる。

かつては創業者の橋下徹氏と松井代表の「二枚看板」に加え、元宮崎県知事の東国原英夫氏ら著名人の参加もあって人気を保ってきた維新だが、橋下氏や東国原氏はコメンテーターとしてエールを送る側に進み、今は「吉村氏の世代」(松井氏)。コロナ危機下で現れた「吉村バブル」の到来に、維新支持者の大阪市で飲食店を経営する40代男性は「もう安倍総理もあかんわ、いてまえ」と鼻息は荒い。

安倍政権も自民党も維新に食われる

「吉村総理待望論」が沸きあがっても国のトップへの道がないと見る向きは、「政界は、一寸先は闇」であることを忘れているのかもしれない。09年夏、支持率が低下していた自民党の麻生太郎政権は現職知事の東国原氏に次期衆院選への出馬を要請したことがある。この際、東国原氏は自らを自民党総裁候補とする条件を突きつけ、実現とはいかなかったが、社会党とも連立政権を組んだ自民党が「与党」の座に固執すれば「知事から宰相」の可能性も捨てない執念を物語る。当時、党選対副委員長だった菅義偉氏が現在の官房長官で、維新との「パイプ役」という構図も今以上に政権支持率が低下し、「吉村バブル」が膨れ上がれば憶測を呼ぶ一因ともなりそうだ。

ある民放テレビ記者は、コロナ危機後の政界をこう予想する。「自民党支持者は、立憲民主党や共産党などを叩くことに専心し、維新には期待を寄せてきた。しかし、これからは維新を警戒しなければ安倍政権も自民党も食われる。『自民対維新』のガチンコ対決が始まるだろう」

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