当初の政府方針は、国民感情からほど遠く
5月6日付毎日新聞は社説で「前例のない事態に、自治体は比較的柔軟に対応している」と評価した上で、事業者に休業を要請しても「補償は無理」と繰り返す政府とは対照的に、小池知事が事業者への「感染防止対策協力金」制度を考案して多くの道府県に広がったことや、軽症者のホテルでの療養原則化に大阪府が早くから取り組んだことを指摘。「政府は地方の役割を尊重し、意思疎通を心がける姿勢を忘れてはならない」と注文をつけた。
4月7日に緊急事態宣言を発令しても、外出自粛による効果を2週間見極めた上でより強い措置を講じるべきだとする当初の政府方針は国民感情とはほど遠く、小池知事は「都民の命がかかっている状況で悠長なことは言っていられない」と早期の休業要請開始を求めた。「お上」の方針に従わない小池氏に政府側は反発し、それに呼応する形で神奈川県の黒岩祐治知事は「都の案は(国の方針を)全く無視している」と批判した。その結果、一時は「小池悪者論」も噴出したが、5月6日までの宣言期限内に収束せず、5月末まで延長された事実を見れば「2週間の様子見」をする政府方針が誤っていたのは明らかだろう。
有事でもマニュアル対応、「口は出すが、金は出さない」
有事でもマニュアル通りの対応を好み、「口は出すが、金は出さない」「後出しジャンケン」という国の姿勢への国民の不信感は日増しに強まっている。今や多くのメディアで「優秀なリーダー」と礼賛されている吉村知事も国の姿勢に不満を抱く1人だ。吉村知事は5月5日、緊急事態措置を段階的に解除する際の独自基準として「PCR検査陽性率7%未満」など3つの項目を設定した「大阪モデル」を公表し、外出自粛や休業要請などの解除基準を示さない国を批判した。出口戦略を提示しない安倍政権にケンカを売った形で、これには西村康稔コロナ対策担当相が「仕組みを勘違いされているのではないか」と反論し、安倍政権に近い政治評論家の田崎史郎氏も「すでに達成していることを目標として掲げている」(5月6日のTBS「ひるおび!」)などと違和感を示した。
だが、「出口」が示されないまま自粛生活を強いられている国民の不満は強い。「1世帯に布マスク2枚配布」で批判を浴びてから世論に敏感となった安倍総理は慌てて解除基準を公表する事態に追い込まれたが、大阪府の松井一郎市長は「あまり吉村知事にやきもちをやくとかではなく、冷静に対応してもらいたい」と冷ややかに見ている。