Uber EATS配達員を保護する法整備が諸外国に比べて遅れている

また、配達人が専業か兼業かで重大性は異なる。日本国内でウーバーイーツは2016年9月からサービスを開始し、現在1万5000人以上が配達人として登録しているという。

ウーバーイーツ日本の武藤友木子代表は日本経済新聞の取材にこう回答している(2019年12月19日付朝刊)。

「ほとんどが隙間時間を使い、副業として配達をする人たちだ。理系の大学生が実験の待ち時間に配達したり、子どもが幼稚園に行っている間だけ主婦が配達したりしている。俳優を目指している人や、起業したけれど、まだ生計を立てられないといった人もいる」

一方、ウーバーイーツユニオンは、こうした副業だけではなく、専業でやっている人もいると言う。

会社側が2019年11月29日に前述した額に基本料金を引き下げ、配達回数が多くなれば報酬が増えるインセンティブを引き上げたことに関して前葉富雄委員長はこう言っている。

「1週間のうちに例えば二百数十回配達してください、それをクリアすると報酬が少し高くなるよみたいなものがあるので、専業にならざるを得ないという人もたぶんけっこういると思います。副業でやると収入が下がってしまうので、今までずっとウーバーだけやっていた人がより抜けられなくなり、もう(今後も)専業でやっていくしかないというような報酬体系に今はなっている」(1月7日記者会見)

ウーバーイーツのサービスは、開始からまだ3年程度と日も浅い。サービスの広がりとともにいずれ専業の就業者が増える可能性もある。

写真=iStock.com/ablokhin
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ウーバーに限らない。近年始まったプラットフォーム型の宅配ドライバーも増えていくだろう。

それに対応した就業者を保護する日本の法整備は諸外国に比べて遅れている。厚生労働省の「雇用類似の働き方に関する検討会」の中間整理の報告書(2019年6月28日)では、

「現時点において、『雇用類似の働き方の者』について画一的に定義することは困難と考えられる。保護の必要性を含め、種々の課題に対応すべき保護の内容とともに、引き続き、実態把握を行いつつ、分析をしていくことが必要と考えられる」

と述べるにとどまり、現在も引き続き検討中だ。

EUの雇用社会総局は、新たな就業形態であるプラットフォームワーカーを労働者と認定し、使用者の義務を明記したEU指令案を出し、加盟国で検討している。

ドイツ連邦労働・社会省も新たな就業形態であるプラットフォームを活用した自営業者が増大すると予測。「自営はビジネスリスクを被りがちであり、独立自営業者では社会的保護を十分に受けられない」とし、法的年金制度の対象に自営業者を含めるなどの検討を進めている。

日本でも今後、ギグワーカーが増大すると言われている。政府が推進している「副業」の受け皿となる可能性があるが、その多くはキャリアアップというより生活費の補てん目的での就業になりやすい。副業、そして専業化する人たちの年金を含む社会的保護は急務だろう。

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