新宿のある居酒屋では「同じ接客仕事」の時給が、直雇用のアルバイトでは1000円だが、派遣会社に登録しているスタッフは1400円という。なぜまったく同じ仕事なのに待遇差があるのか。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「この4月から改正労働者派遣法が施行され、派遣スタッフの時給が上がり、両者の格差はさらに広がる」という――。
パブで働く男女の仕事像
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同じ居酒屋の接客仕事、時給がバイト1000円・派遣1400円の「背景」

同じ飲食店で働く場合、店に直で雇われる「アルバイト」より「派遣」で働くほうが、時給が高くなるケースが増えているのをご存じだろうか。

新宿の居酒屋で派遣として働く男子大学生がこんな話をしてくれた。

「店に直に雇われているバイトの時給は1000円ちょっとですが、僕の時給は1400円です。この店はキッチンもフロアも外国人のバイトがメインで、日本語があまりうまくできないし、早く辞めてしまう人もいる。派遣料金が多少高いのは信頼のおける人が現場に配置されるからではないでしょうか」

居酒屋など飲食店のアルバイトだと、通常、最低賃金を少し上回る程度の時給となるのが普通だ。東京都の最低賃金は1013円だが、同じ仕事でも、前出のような男子大学生ははるかに高い時給をもらっている。

実際にネットで「居酒屋派遣」で検索すると「1300円+交通費」を提示している派遣会社も少なくない。

人材サービス大手のエン・ジャパンの担当者はこう語る。

「飲食店でもやはり派遣の時給が高い傾向にあります。まず飲食店が派遣会社に派遣の発注をする場合、派遣会社自身が募集する派遣スタッフの時給を見て、それに見劣りしない時給を提示してきます。その結果、直接雇うバイトよりも高くなる」

しかし、バイトよりも高い時給を払ってでも派遣を使うメリットはどこにあるのか。担当者は以下の3つの理由を挙げる。