4月から新宿の居酒屋接客「派遣時給」は最低1586円になる
では実際にいくらになるのか。指標となるハローワークの「職業安定統計」の「飲食物給仕係(居酒屋店員、ウエイター・ウエイトレスなど)」の経験年数0年(未経験者)の正社員の平均時給は1221円。
東京の新宿で働く場合、新宿地区の地域指数は117.0となり、これを乗じると時給は約1428円になる。これに通勤手当と72円と退職金上乗せ分の6%を上乗せすると、合計1586円になる。
つまり、新宿の飲食店で給仕を担当する派遣にはこの4月以降、最低でもこの金額を支払う必要がある。
すでに4月の法律施行を前に、大手派遣会社を中心に法律に則った派遣の処遇改善のために派遣先企業に派遣料金の値上げ交渉を行っている。
賃上げに伴う派遣料金の値上げを求められたら派遣先企業も配慮することが法律に明記されている。
派遣にとっては朗報だが、4月以降はアルバイトと派遣の格差がさらに拡大することになるだろう。
派遣の時給が上がることで「聞き捨てならない弊害」
一方、派遣の時給が上がることの弊害も指摘されている。
ひとつは派遣先企業の中には負担増を嫌い、派遣社員の受け入れを控える動きが出ることだ。また、派遣業界の関係者はこう指摘する。
「都道府県労働局に提出する協定書の内容や手続きをクリアできるのか不透明です。基準内容を満たしているか、さらに労働組合がない派遣会社は過半数代表者の選出過程などの手続きも厳しく問われることになります。最も危惧するのは派遣会社が派遣をやめて派遣先企業と“請負契約”を交わすことで請負化する可能性もあります。両者が癒着すると、派遣社員としては入った企業の指示で働く違法な偽装請負が増えることになりかねません」
労働局への届出の手続きを行わなければ派遣会社は事業を存続できなくなる。改正労働者派遣法の施行を契機に中小の派遣業界の淘汰が進行し、派遣会社が激減するとの見方もある。
派遣時給の値上げを契機に派遣会社の淘汰が進めば、どの派遣会社に登録するのかを含めて、働く側にも混乱が発生する可能性がある。