ANA、JALに次ぐ国内3位の航空会社スカイマーク。3年連続の増収増益で、2020年には再上場を予定している。今年10月には企業メッセージなどを刷新したが、これが「地味すぎる」と話題になっている。なぜ「第3極」として強い主張を打ち出さなかったのか――。

なぜ、こんなに地味でおとなしい広告なのか

「確かに地味すぎるかもしれません……」

スカイマークの新しいコピーを打ち出したポスター(画像提供=スカイマーク)

会議室の大きな窓から、羽田空港の滑走路を離陸していく飛行機が見える。スカイマーク本社の応接室で、市江正彦社長はそう答えた。

壁面にはポスターが貼ってある。ブルーのシャツを着た女性の後ろ姿と青い空に、「YOUR WING.」というコピーが白色で太書きされている。このポスターは、今年11月、スカイマークがブランド刷新のために新しく発表したものだ。

解き放たれる自由、若さ、伸びやかさなどが連想されるが、強い印象を残すものではない。「YOUR WING.」というコピーにも刺激は感じられない。なぜ、こんなに地味でおとなしい広告なのだろう――。

そんな疑問をぶつけたところ、市江社長は困ったような表情を浮かべた。

3年連続で増収増益、2020年に再上場の予定だが…

スカイマークは2015年1月に経営破綻し、同年9月から新しい経営陣のもとで経営再建を行っている。3年連続で増収増益を続け、さらに定時運航率は2年連続で1位、日本生産性本部が行った2018年の顧客満足度調査では航空会社国内線部門で2位につけた。2020年の再上場を目指し、この10月には東証へ上場申請を済ませている。

スカイマークでは2017年から毎年1回、定例の記者会見を開いている。事業進捗や経営状況などを説明するもので、私は初回から参加している。

撮影=プレジデントオンライン編集部
スカイマークの市江正彦社長

今年10月、3回目となる記者会見で、市江氏は11月に国際線を再開すると発表。さらに、新しいブランド戦略と「クレド」をお披露目した。クレドとは日本語で「信条」と訳される。企業の社員が心がけるべき行動指針のことだ。

市江氏が読み上げた5つのクレドは以下の通りだ。

1.日本一のバトンワーク
2.すぐ伝える、正しく伝える
3.その場のベストを考え抜く
4.まずは「いいね!」いつも「ありがとう!」
5.たくさんの人生を彩る誇り

市江氏は、この新ブランドとクレドの策定に1500人を超える社員が参加し、社員たちが自ら選んだものであることを強調した。その説明を聞きながら、ひとつの疑問がもたげた。