「こんなことをする意味がない。時間の無駄」
「何をどうすればいいのか、初めはさっぱりわかりませんでした」
口をそろえたのは、社員側を代表するブランドキャプテンの5人だ。5人はランプ管理課、運行乗員部、客室乗務推進部、運航乗員部、品質保証部と社歴も年次も異なる。共通点は全員が経営破綻の前からスカイマークで働いていることだ。
ブランドキャプテンは現場のリーダーとして、それぞれの社員が会社や仕事についてどんなことを考え、何を大事にしたいのかを聞かなければいけない。ランプ部門の打田貴仁さん(26)は、部署で最年少だった。先輩たちとの議論について、こう振り返る。
「自分たちがどんな会社にしたいのか議論をした上で、どんな形に落としこまれるのか、そこに興味がありました。ですので、ぜひやりたいと思いました」
だがスカイマークに労働組合はない。リーダーたちは現場からは経営側から差し向けられた手先のように受け止められる可能性もある。
実際、手痛い反応があったと言うのは、品質保証部の高桑裕美さん(36)だ。
「私は航空機の整備をする技術職のバックヤード業務の仕事をしていまして、ワークショップでは整備の方たちと一緒に議論をしました。最初は『こんなことをする意味がない。時間の無駄』と、一部の人から強く反発する意見が出されました」
「いまさら会社を変えようなんて」とネガティブな意見も
客室乗務員を取りまとめた客室業務推進部の今井隆輔さん(38)は、破綻前から勤務する社員と新人のギャップが明るみに出たと振り返った。
「古い社員からは『いまさら会社を変えようなんて』とネガティブな意見がたくさん出ました。新人社員が驚いたほどです」
一方、パイロットの中尾立人さん(32)は、ワークショップが仕事で大切にしたいことを同僚と確かめ合う場となったと感じていた。
「パイロットの仕事は安全、快適、定時、経済の4つを守ることが基本です。それらを守ったうえで、お客さまによってはつらい気持ちで搭乗した方もいれば、ワクワクしながら乗っている方もいる、そんなひとりひとりのお客さまの思いを少しでも汲み取ることを大切にしているということが同僚との対話の中でわかりました。それは話してみて初めて分かち合えた思いでした」
最初はギクシャクしていたが、次第にどの部署でも前向きに議論が回り出したようだ。それにはスカイマークの特徴が影響している。スカイマークは「スカイマークが好き」な社員が多いのだ。