“日本クオリティ”をどうやって海外に届けているのか
山梨県の甲府市に本社、工場を持つシャトレーゼは主力商品の和洋菓子の製造販売に加えてワイナリー、ホテル、ゴルフなどの運営事業を行っている。グループの従業員数は4200人で売上高は1484億円。海外進出している店舗の売り上げも入っている。[連結対象:菓子(国内外)、ワイナリー2、ホテル11、ゴルフ場20=2024年3月期]
同グループ菓子部門の成長に力を発揮しているのが「ファーム・ファクトリー」という製造、物流、販売のシステムだ。生菓子は日持ちがしないため、通常であれば店鋪のなかで製造する。それに対してシャトレーゼは工場で作る。まず工場が契約している農場から牛乳、乳製品、果実などの素材を調達し、製造する。
できあがった商品は専用便で各店舗に配達し販売。工場で大量生産しているため、価格を抑えることができる。物流は専用トラックなので、作りたてを素早く国内の店舗に配送できる。しかも、2024年には海外店舗を合わせて1000店舗を超えた。ここまで大きな生菓子の製造販売チェーンはシャトレーゼだけだ。
さて、ここからが本題だが、海外の店舗でも、シャトレーゼはファーム・ファクトリーを上手に援用した製造、物流システムを構築した。そのため、商品の質を落とすことなく、しかも、日本で売る場合とあまり変わらない価格で販売している。
ケーキ台は冷凍、果物は冷蔵してアジア各国へ
現在、シャトレーゼが海外に展開している店舗数は計177店舗(2024年6月末時点)だ。
国別では次の通り。
シンガポール 42
インドネシア 41
マレーシア 21
タイ 4
ベトナム 4
UAE 3
わたしはシンガポールでも現地取材したがシャトレーゼは同国内でナンバーワンの店舗数を誇るスイーツ・チェーンになっていた。他のアジア地域でいえば、香港が店舗数が最大で、現在、もっとも伸びているのが人口2億7000万人の国、インドネシアとのこと。
前述の通り、海外店舗への輸送はファーム・ファクトリーシステムを応用している。具体的には船便と航空便の使い分けだ。
ケーキの台の部分、つまりスポンジケーキと生クリームは瞬間冷凍したものを船便で運ぶ。日本からインドネシア、ベトナム、タイで約10日間、シンガポールなら1週間といったところである。台の上に載せる日本産の果物は冷蔵にして飛行機で運ぶ。
店舗ではケーキの台の部分は解凍する。そして、空輸した新鮮な果物をその上に載せる。果物は季節によって変わっていく。春はイチゴ、夏であれば白桃、秋になればシャインマスカットなどのぶどうだ。