スカイマークと大手2社との「決定的な違い」

そもそも航空業界を目指す人の多くは大手2社を志望する。スカイマーク社員の中には、大手2社をはじめ他社の試験で結果が出なかった人や、大手2社の子会社からスカイマークに転職した人が少なくない。

スカイマークは大手2社とまったく違う。社員数は2500人。連結でJALが約3万4000人、ANAが約4万3500人の社員がいるのに比べるとグッと小さい。また、JALやANAと異なり、子会社や関連会社がないため、運航業務は基本的に自社社員が行っている。はやりの言葉になぞらえれば「ワンチーム」を意識しやすいのだ。

さらに組織全体が若い。正社員の平均年齢は33.1歳。大手2社は、ANAの平均年齢が37.50歳(2019年、人事関連データ)、JALは40.1歳(2018年、有価証券報告書)だ。

航空会社は客室乗務員やカウンター業務のような直接乗客と接する部門もあれば、貨物、ランプといった運輸業務、航空業務を裏から支える事務方など、同じ会社でありながら部門ごとに専門性は異なる。再建中のスカイマークが安全運航を守りつつ同時に定時運航を目指すにあたり、親会社と子会社という分断のない組織だったことは、チームワークでの目標達成にプラスの影響があったはずだ。

小さく若い組織で、全員が平等。そうしたフラットな企業風土について、多くの社員は入社してしばらくたってから気づき、「スカイマークが好き」になるようだ。

「たくさんの人生を彩る誇り」を入れたい

9月末、クレドを策定する全体ミーティングが行われた。事前に事務局が社員から出てきたクレド案を精査し、15の候補を用意。そこから4つに絞り込むことになり、挙手が行われた。

4つのクレドに決まろうとしていたところへ、運航乗員部の西川侑希さん(31)が異議を唱えた。「たくさんの人生を彩る誇り」を入れたいと強く希望したのだ。西川さんの所属する運航乗員部の仕事はパイロットの人員配置や運航スケジュールの管理で、コンピューターを使うデスクワークだ。西川さんはバックヤードで働く社員の思いを次のように代弁した。

「航空会社といっても私たちの仕事は直接お客さまと接することがありませんので、先に決まろうとしていた4つのクレドは、私たちの業務に直結するとは言い難かったです。だけど私たちも飛行機を飛ばす仕事に関わっている、その仕事の自覚と働く誇りを思い出させてくれる言葉が欲しいと思ったんです」

再投票では「たくさんの人生を彩る誇り」に多くの票が集まり、最終的にひとつ項目を増やして5つの言葉からなるクレドが完成した。

「航空旅客業に携わる全ての人の思いが凝縮された言葉だと思います」

パイロットの中尾さんが言い添えた。