「お国のために一生懸命お務めしてほしい」と送り出された
私は雅子皇后にインタビューしたとき、「天皇陛下とご結婚以来26年、皇族になって生きづらいと思ったことはありませんか?」と聞いてみた。
皇后は、少し困ったような顔をされ、「生きづらいと思ったことはありませんけれど……」といって、言葉を仕舞われた。
もちろんこれは、私が惰眠を貪っているときに見た夢でのことだが、今の雅子皇后の胸中を、私が勝手に忖度すれば、そう感じているのではないだろうか。
1993年6月9日、小和田雅子さんの自宅前には、400人以上の報道陣が並んでいた。午前6時18分、皇太子の使いの山下和夫東宮侍従長と高木みどり東宮女官長が到着した。
母親の優美子さんは娘に、「お体に気をつけて、お国のために一生懸命お務めしてほしい」と言葉をかけたそうである。
雅子さんは、水色のシルクの生地に水玉模様の柄の入ったツーピース。襟元にはパールのネックレス、白い手袋に白いバックを持っていた。皇太子の身長に合わせて4cmの中ヒールを履いていた。
迎えの車に向かって歩き出した雅子さんに、薔薇の花を一本手にしたお手伝いさんが、愛犬ショコラを抱いて駆け寄った。雅子さんは、ショコラの耳に顔を寄せて、「バイバイ」と囁いたという。