「多くの公務をこなせるのか」と悲観的な見方をしていた

思うように公務がこなせないことを、宮内庁関係者は週刊誌などにリークして世論を誘導し、「雅子妃は皇后になるべきではない」などのバッシングを続け、雅子さんに寄り添う皇太子にまで、「天皇になることを辞退せよ」という呆れ果てた言辞が雑誌に載ったこともあった。

秋篠宮家に親王(男の子)が生まれ、女系天皇はもちろん、女性天皇までも排除する安倍首相が“君臨”する間は、愛子天皇実現の可能性はほとんどなくなった。

作家の赤坂真理は同じ朝日新聞で、このように話している。

「5年前の著書『愛と暴力の戦後とその後』で、愛子さまについてこう書きました。

『(彼女は)生まれてこのかた、『お前ではダメだ』という視線を不特定多数から受け続けてきたのだ。それも彼女の資質や能力ではなく、女だからという理由で』

男系男子という原則での皇位継承にこだわる人々の議論を読んだとき、そこでは女性は存在価値がないかのように扱われていると感じました」

そんな雅子さんに一大転機が訪れるのである。平成の天皇が「生前退位」をすることで、皇太子と雅子さんが、新天皇皇后になる日がきたのだ。

だが、週刊誌をはじめ多くのメディアは、雅子さんが御代替わりの数々の儀式に耐えられるだろうか、皇后として多くの公務をこなせるのだろうかという悲観的な見方をしていた。

中には、公務を果たせない雅子皇后を見かねた天皇が、早々に退位するのではないかという、無責任なものまであった。

儀式の最中に流した“2度の涙”の意味

だが、それらの雑音は、5月27日、トランプ大統領が国賓として来日した際の歓迎宮中晩さん会で見せた雅子皇后の見事な対応で、杞憂に終わった。

ニューヨーク・タイムズ紙が「トランプ訪問で、雅子皇后はスター」と題して、おおむねこのように報じた。

「トランプ氏と会話する雅子皇后のイメージは、彼女が外交能力を活かしてソフトパワーを促進するのを助け、ひょっとしたら、厳しい家父長制の皇室で、新しい女性のあり方を確立することになるかもしれない」

雅子皇后の行く先々で、数千、数万の人たちが祝福し、雅子皇后ブームとでもいうべき現象が起きた。写真集がつくられ、カレンダーまでが出された。女性週刊誌はこぞって「雅子さんの時代が来た」と手放しで賞賛した。

御代替わりのハードスケジュールも難なくこなす雅子皇后の姿は、これまでの彼女ではないように思えた。

晴れやかな笑顔が国民を魅了し、熱狂したのも当然であった。

雅子皇后が儀式の最中に流した2度の涙も話題になった。