政府は全国の日本語学校約750校に対し、在籍する留学生に一定レベルの語学力を身につけさせるよう定めた。だがその基準は低く、「悪質校」が減る見込みは薄い。日本語教育に関わる専門家たちは、なぜこうした状況を黙認しているのか。ジャーナリストの出井康博氏が解説する——。
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全世代型社会保障検討会議で発言する安倍晋三首相(右から2人目)=2019年11月26日、首相官邸

産廃処理業者が日本語学校を運営していた

11月、北海道旭川市の「旭川日本語学校」経営者らが、留学生を違法就労させたとして入管難民法違反(不法就労助長)容疑で逮捕された。経営者は同校を運営するタクシー会社の会長で、自らが他に経営していた産業廃棄物処理場などにおいて、留学生を「週28時間以内」の就労制限を超えて働かせていた。

なぜ「旭川」のような地方の町に日本語学校があって、「産廃処理場」の経営者が学校運営に乗り出しているのか。また、勉強目的に来日しているはずの留学生たちが、なぜ違法に長時間働いているのか——。そんな疑問を抱く読者も少なくないだろう。だが、この事件には、近年急増した留学生と日本語学校のゆがんだ関係が象徴されている。

法務省出入国在留管理庁によれば、留学生の数は2018年末で33万7000人を数え、12年末からの6年間で16万人近く増えた。政府が08年に「留学生30万人計画」を策定し、留学生を増やそうと努めてきた結果である。その過程で留学ビザの発給基準が緩み、出稼ぎ目的の留学生たちがアジアの新興国から大量に流入した。

違法就労をしていた旭川日本語学校の留学生はベトナム人で、同校は他にもネパールやウズベキスタンなどの出身者を受け入れていたという。いずれも出稼ぎ目的の留学生の送り出しが多い国ばかりだ。