筆者は何も日本語学校が“偽装留学生”問題の元凶だと言いたいわけではない。日本語学校は単に「30万人計画」という国策に便乗している存在にすぎない。「悪質校」が増えているとすれば、同計画で大量に流入した“偽装留学生”の受け入れ先が必要だからなのだ。

問題を根本から解決するためには、政府が同計画の旗を降ろすしかない。底辺労働者が必要なのであれば、正直にそう宣言し、「留学生」とは別の方法で受け入れればよい。途上国の若者を借金漬けで「留学」させ、違法就労するしかない状況に追い込み、しかも学費まで吸い上げるというシステムはあまりにエグい。

教育界の研究者はなぜ声を上げないのか

一方、「30万人計画」や日本語学校の内情は、日本語教育や留学生政策に関わる研究者たちは熟知している。それなのになぜ、彼らは現状を正すべくもっと声を上げないのか。そのことが筆者には理解できない。「学問の自由」を発揮してこそのアカデミズムなのである。

今年に入って以降、留学生の増加には歯止めがかかっている。一部のアジア新興国出身者に対し、入管当局が留学ビザ審査を厳しくした影響だ。過去数年間のような“偽装留学生”の急増こそ、今後は起きないかもしれない。

とはいえ、形ばかりの日本語学校〈厳格化〉という方針ひとつ取っても、政府の本気度は疑わざるを得ない。冒頭で紹介したような日本語学校の不祥事にしろ、いつ再び問題となっても不思議ではない。それは何より、日本語学校業界や日本語教育分野にとって不幸なことである。

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