ここにきてスキャナの売れ行きが好調だ。なかでも、大量の印刷物をローラーで一度に取り込んで読み取るシートフィード型に人気が集まっている。この市場は2009年3月以降、販売台数・金額とも前年同月比でプラスに転じた。ちなみに、10年12月は台数ベースで199.7%、金額で200.5%となっている。
好調の背景を、家電の実売調査を手がけるBCNの森英二チーフアナリストは「もともと情報共有や整理のため、紙の情報をデジタル化するという流れがあった。そこに、シートフィード型ではトップメーカーのPFUが低価格の新機種を発売したことで、SOHOで働く人たちの手が届いたのだと思う。加えて昨年は電子書籍端末の発売が相次いだ。端末で読むために本を裁断して、スキャナで取り込む動きが後押しをした」と分析する。
実際、日本国内で「iPad」が発売された昨年5月直後と「ガラパゴス」や「リーダー」が登場した12月に台数・金額とも前年同月を大きく上回った。まだこれらの端末を使って閲覧できるコンテンツが少ないことが主な理由で、森氏は「このニーズは、ITリテラシーの高いアーリーアダプター層、なかでもマンガマニアが担っているようだ」と見ている。
おそらく電子書籍がらみのスキャナは、端末の普及とともにしばらくは伸びていくだろう。ただし、電子書籍で読みたいものを読める環境、すなわち配信サービスにおけるダウンロードのしやすさやコンテンツが充実することによって沈静化することになりそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)