高速鉄道や原子力発電といったインフラをパッケージで海外展開する動きが活発だ。リーマンショック後の世界的な不況の中で、先進各国はこぞって新興国への輸出に力を入れている。一方、新興国側は高い経済成長を支える交通、電力などの分野における需要が旺盛になっている。しかも、運転・保守の経験が乏しいことから、そのノウハウも求めている。
こうしたニーズはほかに温暖化ガス削減あるいは水ビジネス、電気自動車などにもおよぶ。国際協力銀行が、国際機関や各国政府、民間シンクタンクの統計をもとに試算した2015年の市場規模は世界全体で約170兆円になるという。日本としても、国内需要の低迷が続く中で積極的に打って出るべき有望市場といっていい。
同行国際経営企画部の天野辰之参事役は「それには官民一体の取り組みが不可欠。例えば、昨年10月に設立された国際原子力開発のような国策会社が受注の中心にならなければ、国際競争に勝つのはむずかしい」と語る。この言葉の裏には一昨年以来、原発入札でUAEは韓国に、ベトナムはロシアに敗れた苦い経験がある。同じ轍は二度と踏まないということだろう。
もともと、これらの分野では日本は高い開発力と技術力を持っている。折しも、国際協力銀行の日本政策金融公庫からの独立が昨年暮れに決められたばかりだ。同行を100%政府出資の独立機関にして、国の指導力を強めた受注戦略を展開する考えだ。当面の目標は20年、年間のインフラ輸出を約20兆円に置くという。
(ライヴ・アート=図版作成)