スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が3月2日、アップルの新製品「iPad2」の発表イベントに姿を見せた。1月の病気療養発表からほぼひと月半ぶり。席上、ジョブズ氏は「われわれは長い時間をかけ、この製品を開発してきた。この日を逃したくなかった」と挨拶したという。つかのまのカリスマの登場だが、米株市場はこれを好感したようだ。
その理由を、ニューヨーク在住のファンドマネジャーである堀古英司氏は「同社の革新的な製品力と、それを確実に実現してきたジョブズ氏の手腕を投資家が評価しているからだと思う。私は投資の判断材料として、その会社の製品やサービスを10年後も使っているかどうかに視点を置いている」と語る。おそらく、現在のアップルユーザーは、そうした固定的なファンだろう。
当初、ジョブズ氏が経営の第一線からいなくなることによるアップルの株価へのマイナス影響が取り沙汰された。しかし、直後こそ326ドルと落ち込んだものの、2月半ばには363.13ドルと過去最高を更新。3月に入っても高値を維持している。「iPad2」の発表後は360ドルに達した。
堀古氏は「直近のアップルの株価収益率(PER)は、余剰現金を勘案すると12倍にすぎない。この数字は『iPhone』などの人気商品を次々と出し、好業績を挙げている企業としては割安で投資価値は高い」と話す。ジョブズ氏の健康不安は、依然として予断を許さないが、当面株価は現在の水準で推移していきそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)