横浜市の将来図

横浜は私が育った土地であり、思い入れも深い。20年ほど前には横浜市の将来図を横浜の財界人の会合に何回か提案している。またその構想は市長が代わるたびに説明に行っているし、かなりの部分は実現してきている。その中で、IR誘致をするのなら、横浜港の瑞穂埠頭の大部分を占めている港湾施設「ノースピア(横浜ノース・ドック)」を使うことを進言した。

このエリアは横浜のど真ん中にありながら、アメリカ軍(陸軍)が港北区の岸根基地から撤退した後もいまだに返還されず、アメリカが占領する形になっている。今さら鉢巻きを締めて返還請求運動を起こすのは横浜らしくないし、トランプ大統領得意のディールに持ち込まれたら、いくら金を請求されるかわからない。

そこで建前上は米軍が占領したままにして、ノースピアにカジノをつくるのである。入るにはパスポートが必要だから、入場管理はしやすいし、ギャンブル依存症のリスクも軽減できる。

ノースピアを使うアイデアは奇抜でもなんでもない。一番オーソドックスだと思うし、これで港運協会の懸念も丸く収まるのではないか。

ラスベガス・サンズが大阪を見限って横浜、東京のIRに乗り換えたのは前述の通り。サンズのオーナーであるシェルドン・アデルソンはトランプ大統領を顎で使う、と言われている。瑞穂埠頭をサンズに献上すればトランプ大統領も喜ぶに違いない。

一方、間もなくマカオのカジノライセンスを失う、と言われているメルコリゾーツのローレンス・ホーには中華街に近い場所を与えて、今やマカオのランドマークになっているグランド・リスボアのようなIR施設をつくってもらうのがいいだろう。

私は世界中のカジノを見てきたが、カジノというのは1つだけぽつんとつくってもなかなか集客は期待できない。商業施設やイベント施設も含めて「集積」させることが非常に大事で、横浜に数社まとめて誘致することができれば、新生ラスベガスやマカオのような賑わいをつくり出せるかもしれない。その中で私が20年来提案し、今や8割方できてきている「横浜をベニスに」という親水性のある構想も完成の領域に達するに違いない。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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