すでに誘致を表明、あるいは検討しているのは北海道(苫小牧)、千葉(幕張)、東京(台場)、神奈川(横浜)、愛知(名古屋、常滑)、大阪(夢洲)、和歌山(マリーナシティ)、長崎(ハウステンボス)など。沖縄も有力な候補地だったが、翁長雄志前知事に続き、現職の玉城デニー知事もIR誘致には否定的だ。

IRの区域認定地域は全国で最大3カ所

IR整備法によれば、IRの区域認定地域は全国で最大3カ所。関西圏では大阪と和歌山が名乗りを上げているが、同じ圏内から2カ所が選定されるとは考えにくい。バランス的には首都圏1、関西圏1、その他1という「割り当て」が予想される。

大阪府・市は大阪湾の人工島・夢洲に万博とカジノをセットで持ってこようと精力的に誘致活動を展開、まずは25年の万博誘致に成功した。IR誘致でも有力視されてきたが、ここにきて雲行きが怪しくなった。大阪のIR誘致に伴って大阪への事業進出に意欲を見せていたのは件のラスベガス・サンズだ。

ところが横浜市がIR誘致を表明した途端にサンズは掌を返して、「大阪の事業者募集の入札には参加せずに、横浜市や東京都の開発に注力する」と方針転換した。マカオのカジノ王スタンレー・ホーの息子であるローレンス・ホー(メルコリゾーツ&エンターテインメント)も東京または横浜、と明言している。大阪府・市は「負の遺産」になっている埋め立て地の再利用などというケチなコンセプトにこだわらず、和歌山も巻き込んで、関空を基点とした新たな構想でIR誘致を推し進めたほうがいい。

二者択一のライバル関係は東京都と横浜市にも当てはまる。ともに羽田空港という国際空港に近く、大型船が入れる港湾を備えていて、誘致条件的には申し分ない。小池百合子都知事は「プラス面もデメリットもある。要検討」と態度を明確にはしていないが、誘致に前向きな言動もちらつく。小池都知事は和歌山のIR誘致の後ろ盾と言われる二階俊博自民党幹事長とは仲良しだが、横浜市が地元の菅義偉官房長官との関係はよろしくない。横浜市の突然のIR誘致表明は、菅氏が小池都知事の初動を封じるために仕掛けた、との観測もある。

カジノを含むIRは巨大な利権の巣窟。IRの区域認定は20年のオリンピック後と言われている。表の誘致合戦と裏の利権を巡る「暗闘」は今後さらに激しくなるだろう。

断っておくが、私はカジノ不要論者である。訪日外国人客数が1000万人に満たなかった12年までなら、訪日客を呼び込む観光素材としてカジノ誘致にもそれなりの意義があっただろう。しかし今や訪日外国人客数は年間3000万人を突破し、20年には4000万人、30年には6000万人という目標を政府は掲げている。