「ダムに頼る治水」の根源的な問題

ダムに頼る治水の危険はここにある。本来、河川の弱点をきちんと整備しなければならないところ、河川のリスクはダムに貯め込むということで、河川の弱点の整備が軽視されてしまう。

河川の弱点とは、川幅が急に狭くなったり、支流が合流したり、屈曲がきつくなったりすることで、水量が多くなったり水の流れが悪くなったりする地点だ。机上の論通りに河川の水位を抑えることができたとしても、河川の弱点のところで堤防決壊を招いてしまうことが多い。歴史をたどれば、河川の氾濫箇所、堤防の決壊箇所はだいたい同じ地点になっている。そして堤防の強度というものは客観的に正確に計測できるものではなく、机上の論で計算した水位に抑えたとしても確実に堤防を守れるわけではない。

ところがダムに頼る治水は、水位を抑えることが中心となってしまい、堤防を含めた河川自体を強化する思想になりにくい。この点がダムに頼る治水の根源的な問題だ。

だから河川改修による治水を原則とし、莫大な時間と手間暇とお金がかかったとしても、これからは河川自体を強化する治水に力を入れるべきというのが僕の持論だ。

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橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

大阪の槇尾川ダムは、建設工事に着工していたにもかかわらず中止し、河川改修による治水に切り替えた。大阪府庁の担当役人たちが、その河川改修案を必死になって実現してくれた。住民との合意を徹底してやってくれた。そして、かつては曲がりくねり、堤防も脆弱だったあの槇尾川上流域が、びしっと河川整備された。街自体が完全に生まれ変わった。驚くばかりの街の変化だ。

僕は政治家を辞めた後に、現地を訪れて、かつて激しく対立したダム建設推進派の住民の皆さんと久しぶりにお会いした。大阪府の職員から街の現状の説明を受けて、住民の皆さんと意見交換した。

そのとき、「橋下さん、ダムを中止してほんまによかったわ。今この街の方が本当に安全・安心を感じるで。ほんまこの街は、これまで雨にうなされていたからな。何より将来世代に水害に強い街を残すことができたのが一番やわ。でもな、あんときの橋下さんやったからこっちもエキサイトしたんや。今日のような橋下さんやったら、あんときもう少し冷静に話ができたやろうけどな」と言われた。

苦笑いしつつ、ほんと嬉しかった。

(略)

これからの治水行政は、莫大な時間、労力、お金がかかろうとも、やはり河川改修による治水の方に力を入れていかなければならない。都市部で人口が密集しているところであっても原則は河川改修による治水だ。今回威力を発揮した話題の東京の地下放水路は、地上の土地買収が難航することから地下に河川を作ったようなもので、これも河川改修による治水の一環だ。

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(ここまでリード文を除き約3200字、メールマガジン全文は約9400字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.171(10月15日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【「大豪雨」時代の治水行政(1)】台風19号豪雨被害で考えたい――未来世代の安全・安心のためには「ダムに頼る治水」でいいのか?》特集です。

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