いつも感じがいいから、あの人は優しい人だ│印象だけで決めつけると騙される。犯罪心理学が明らかにした「信頼できる人」の見極め方と、信頼される顔のつくり方とは。

表情だけで判断する人は詐欺師に狙われる

「あの人は笑顔が素敵で感じがいい」
「初対面なのに信頼できる気がする」

私たちは日常的に、表情から相手を判断しています。ところが、表情だけを頼りにした判断は、思いのほか不十分です。犯罪心理学の世界では、表情だけで相手の感情や誠実さを判断しようとすることの限界は、すでに通説となっているのです。

私は犯罪心理学を専門とし、なかでもポリグラフ検査(記憶の有無を生理反応で鑑別する)の研究を続けてきましたが、顔の表情だけで何かを判断しようとすると、ことごとく精度が低い結果になります。

さらに大きな問題として、欧米系の人々は表情で感情をはっきり表現する文化を持っていますが、日本人を含むアジア系の人々は、できるだけ表情に出さないという傾向があります。つまり、欧米で行われた表情分析の研究を日本人にそのまま当てはめると、より一層精度が落ちてしまうのです。

表情は、相手の気持ちを読み取るための「一つの指標」ではあります。しかし、それだけを頼りにするのは危険です。私たちが日常的に「ニコニコしているから信頼できそう」「目が笑っていないから怪しい」と判断してしまうのは、ある意味で自然なことです。ただし、その判断が表情という一つの指標だけに依存しているとすれば、詐欺師にとっては格好の隙になります。

では、表情だけでは不十分だとすれば、人はどうやって相手の誠実さや機嫌を本当の意味で判断しているのでしょうか。

答えは、表情を含む複数の情報を「総合的に」見ているということです。人の気持ちというものは、直接目には見えません。その気持ちが表れるのは、表情だけではありません。声の調子、話すスピード、返答のタイミング、そして会話全体の文脈。これらを無意識のうちに組み合わせて、私たちは相手を判断しているのです。

なかでも意識しておきたいのが、返答のタイミングです。自分でちょっと考えてから答える必要がある場面では、どうしてもレスポンスがズレます。普段の雑談では即座に返してくる人が、肝心の話題になった途端に間が変わる。それは、その話題について何かを考えている、あるいは言葉を選んでいるサインである可能性があります。こうした「ズレ」を意識的に観察できるかどうかが、判断の精度を左右するのです。

表情の中でも、日本人が特に信頼の手がかりとして見ているのは「目元」です。

よく「目が笑っていない」と言うことがありますが、これは目の周囲にある眼輪筋などがほとんど動いていない状態のことです。本当に笑っているときは、この眼輪筋が自然に動き、目尻に細かなしわが寄り、目元全体が柔らかく緩みます。ところが「つくり笑顔」のときは口元だけが動いて眼輪筋はほとんど動かない。私たちは無意識のうちに、そのわずかな違いを察知しているのです。

(構成=本誌編集部)