2023年6月29日、横浜市にある自宅マンションの駐車場で大学生の女性(18歳)が、元交際相手の男性(22歳)に刺殺される事件が発生した。犯罪心理学者の桐生正幸さんは「恋愛関係がもつれると、ネガティブな感情がまとわりつき、なかなか解決しない。子どもが交際相手から付きまとわれた場合は、まず親がストーカーの心理と行動を認識して対策するべきだ」という――。

横浜の痛ましいストーカー殺人事件は世に衝撃を与えた

今年6月、横浜にて、約2年間の交際を解消した後も執拗に復縁を迫っていた男性が、その交際相手の女性の命を奪うという事件が起きた。福岡の繁華街の路上で起きたストーカー殺人から半年も経たないうちに、再び同様の凶悪犯罪が出現し、娘を持つ親の不安がますます高まっている。

執拗に復縁を迫る狂気にも似たストーカーから、どのようにして子どもたちを守れば良いのか。犯罪心理学の研究知見から、今できる最善の対策を、ここで検討してみたい。

【図表】警視庁に寄せられたストーカー相談件数
相談者の性別は、女性が963人(79.8パーセント)、男性は244人(20.2パーセント)で、過去4年間も同様の傾向。出典=警視庁「ストーカー事案の概況」2023年3月3日
【図表2】警視庁に寄せられたストーカー相談者の年齢
20歳、30歳代が744人で全体の約62パーセントを占め、過去4年間も同様の傾向。出典=警視庁「ストーカー事案の概況」2023年3月3日

日本のストーカー事案の多くは元恋人からの被害であるが、私がふだん学生から受ける相談も、概ね元カレからのストーキングに関するものである。恋愛関係のもつれには、ネガティブな感情がまとわりつき、なかなか解決しない側面を持つ。

危険性が高いストーカーはどのタイプか

この記事では、まず凶悪化するストーカーの心理面についてお伝えする。

これまでの研究において、ストーカーの分類としては、医学的な観点からの分類と、犯罪捜査の観点からの分類がある。ミューレン(Mullen,2000)は、双方のアプローチを考慮した分類を提案している。それらは、ストーキングが発生した際の対人関係、ストーカーの行動や特徴、それに伴う被害者のダメージや行為の発展性などを手掛かりに、分類を行っている。

【図表】ミューレンによるストーカー分類*
*ミューレンの分類を基に、著者が作成

この分類からすると、殺害に至る場合は、元恋人や元妻に対する「拒絶型」と考えられる。また、危険性の高さから反社会性人格障害も注目されることとなる。