2023年6月29日、横浜市にある自宅マンションの駐車場で大学生の女性(18歳)が、元交際相手の男性(22歳)に刺殺される事件が発生した。犯罪心理学者の桐生正幸さんは「恋愛関係がもつれると、ネガティブな感情がまとわりつき、なかなか解決しない。子どもが交際相手から付きまとわれた場合は、まず親がストーカーの心理と行動を認識して対策するべきだ」という――。
横浜の痛ましいストーカー殺人事件は世に衝撃を与えた
今年6月、横浜にて、約2年間の交際を解消した後も執拗に復縁を迫っていた男性が、その交際相手の女性の命を奪うという事件が起きた。福岡の繁華街の路上で起きたストーカー殺人から半年も経たないうちに、再び同様の凶悪犯罪が出現し、娘を持つ親の不安がますます高まっている。
執拗に復縁を迫る狂気にも似たストーカーから、どのようにして子どもたちを守れば良いのか。犯罪心理学の研究知見から、今できる最善の対策を、ここで検討してみたい。
日本のストーカー事案の多くは元恋人からの被害であるが、私がふだん学生から受ける相談も、概ね元カレからのストーキングに関するものである。恋愛関係のもつれには、ネガティブな感情がまとわりつき、なかなか解決しない側面を持つ。
危険性が高いストーカーはどのタイプか
この記事では、まず凶悪化するストーカーの心理面についてお伝えする。
これまでの研究において、ストーカーの分類としては、医学的な観点からの分類と、犯罪捜査の観点からの分類がある。ミューレン(Mullen,2000)は、双方のアプローチを考慮した分類を提案している。それらは、ストーキングが発生した際の対人関係、ストーカーの行動や特徴、それに伴う被害者のダメージや行為の発展性などを手掛かりに、分類を行っている。
この分類からすると、殺害に至る場合は、元恋人や元妻に対する「拒絶型」と考えられる。また、危険性の高さから反社会性人格障害も注目されることとなる。