重大事件を引き起こした非行少年が更生することはあるのだろうか。弁護士の知名健太郎定信さんは「私が国選弁護人となった15歳で殺人を犯してしまった少年は、支援者との文通を通じて、共感性や罪悪感を取り戻しつつあった。安定・継続した支援さえあれば、たとえ重大事件を起こした非行少年でも更生することができる、と私は信じている」という――。(後編/全2回)

※本稿は、岡田行雄編著『非行少年の被害に向き合おう! 被害者としての非行少年』(現代人文社)の一部を再編集したものです。

頼もしかった「ばっちゃん」の存在(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/fizkes
頼もしかった「ばっちゃん」の存在(※写真はイメージです)

前編から続く)

頼もしかった「ばっちゃん」の存在

少年の面会は、3名いる弁護人のなかでも、ほぼ私ひとりの役割となっていきました。

裁判員裁判となって以降も、週1回は面会に行くことにしていました。ただ、当然のことですが、15歳の少年にとって、接する大人が私だけという状況が望ましいとはいえません。

しかし、少年の家族は、少年に虐待を加えていた加害者であり、面会は期待できませんし、仮に面会をしたとしても、かえって悪影響となることが予想されます。

そんななか、頼もしかったのが「ばっちゃん」の存在でした。

多くの少年や受刑者と文通

K少年が起訴されて間もないころ、矯正関係のOBの方から電話をいただき「ある人を紹介するので、少年と文通をしてもらったらいいのではないか」との提案をいただきました。

その方は、他県で40年以上も前から、ひとりで子ども食堂のような活動を続けてこられており、現在は、それを組織化して、NPO法人の理事長をされている方です。

私も、少年問題に関わるひとりとして、もちろんお名前はうかがったことがありましたが、直接の面識はありませんでした。

さっそくばっちゃんの携帯番号を聞き、電話をかけさせてもらうと、90歳近いという年齢をまったく感じさせない元気な声で、これまで関わってきた子どもたちのこと、多くの少年や受刑者と文通をしていることなどを話してくれました。

そのなかには、ばっちゃんの著作を読んで、手紙を送ってきた無期懲役の受刑者もいるそうです。

そのようなひとたちと文通するというのは、一生関わるという覚悟がないとなかなかできることではありません。