「どうせ仕事で相手をしているだけなんだ」
K少年の生い立ちを聴けば聴くほど、少年の身の回りには、信頼できる、安定した大人がいませんでした。
自分の都合で子どもの面倒を見ることを放棄し、虐待を加える親。
兄から虐待を受けても、お腹をすかせていても、まったく助けてくれない親族たち。
精神的にも不安定な人が多かったようであり、少年は乱高下するまわりの大人たちの気分に翻弄されながら、育ってきたようでした。
そんな大人に囲まれて育ったK少年は、その後、転々とした施設の職員に対しても、「どうせ仕事で相手をしているだけなんだ」「いつか見捨てるのだ」と信頼感をいだくことができず、やさしくされればされるほど、かえって反発を感じるようになっていたそうです。
「他人のためにここまでできるって、本当にすごい人ですね」
K少年には、ありのままに自分を受け入れてくれ、安定して、継続的に関わってくれる、裏切らない、切り捨てない大人が必要だと思っていたのですが、この点、ばっちゃんは、まさに適任だといえました。
さっそく少年に、ばっちゃんの活動を紹介した書籍を差し入れました。
少年は、書籍を読んで「他人のためにここまでできるって、本当にすごい人ですね」「でも、本当にこんな人がいるんですか」と懐疑的な様子でしたが「文通をしてくれる、というのであれば、ぜひやってみたいです」と申し出ました。
こうして、K少年とばっちゃんの文通がはじまったのでした。