少年院に収容される少年少女は、なぜ非行に走ったのだろうか。熊本大学大学院の岡田行雄教授は「少年院に在籍する少年の95%が虐待被害者という調査もある。虐待を受けて非行に走った少年少女への支援が彼らの将来を決める」という――。
※本稿は、岡田行雄編著『非行少年の被害に向き合おう! 被害者としての非行少年』(現代人文社)の一部を再編集したものです。
児童虐待の「定義」
児童虐待の防止等に関する法律2条によれば、児童虐待は次のように定義されています。
① 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
② 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
③ 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前2号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
④ 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力……その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
これを受けて、一般に①を身体的虐待、②を性的虐待、③をネグレクト、④を心理的虐待と呼んでいます。
非行少年の95%が虐待被害者
非行少年の多くがこうした虐待被害を受けてきたことは、今から20年ほど前の法務省による調査で明らかになりました。
それによれば、当時の全国の少年院に在籍する一定の少年を対象に行われたアンケート調査で回答のあった2251人のうち95%以上にあたる2159人が身体的暴力、性的暴力、ネグレクトのいずれかの被害を受けていました(※1)。
※1 板垣嗣廣他「児童虐待に関する研究」法務総合研究所研究部報告11号(2001年)10頁以下参照。