【旅】罰金8000円も「必要な驚き」 不運を感謝に変える旅の習慣
機嫌よく見られるのは旅がくれる驚きのおかげ
毎年、4月と10月の2回、僕はパリにアパルトマンを借りて、20日間ほどを過ごします。年に2〜3回は長めの旅に出るのが僕の長年の習慣で、1年のうち都合1カ月半ほどは旅先で過ごしていることになります。
朝には近所の市場へ出かけて、その日に食べたいものを選び、部屋に戻って自炊します。観光名所をめぐるでもなく、決まった予定をこなすでもなく、ただそこで暮らすように日々を過ごす。旅というより、生活の場所をしばらくのあいだ移している。僕の旅は、いつもそんなふうに始まります。
市場を歩くと、名前も知らない魚や野菜が並んでいます。味の見当もつかない食材に、その日の気分で手が伸びる。好奇心で買って帰りキッチンで煮たり焼いたりしてみると、思いがけず美味しかったり、どうにもならなかったり。そうした小さな成功や失敗に、驚きや幸せを感じるのです。
僕にとって旅とは何かと問われれば、それは「驚きに出会う」ことかもしれません。驚きとは計画したり意図して起こるものではなく、偶然の出会いによって与えられる「ギフト」のようなものではないでしょうか。見たことのない美しい景色、初めて知るその土地の歴史や文化、些細なことから気づく言葉や習慣の違いなど。小さな驚きもあれば、大きな驚きもあります。
驚きに出会うと心が動き、体験がより深く、記憶に刻まれます。それは新しい知識を取り込むことであり、充実を感じる瞬間でもあります。「目的」とは少し違う、自分の心を動かしてくれる新鮮な驚きを求めることが、僕にとっての旅の定義なのだと思います。
旅先で驚きを感じられると、僕は誰かに「お返し」がしたくなります。一方的に与えてもらうだけでは、どうにもバランスが悪いからです。大抵の場合、すぐその場では無理ですし、いつも相手がいるとも限りません。そういうのは世の中を巡っているものなので、相手は誰でもいいのです。
こんな珍しい風景を見てきた、あの店の料理が美味しかった、旅先でこんな目に遭った――。自分の体験を話すことで誰かに驚いてもらえたら、僕は「お返し」ができたことになります。なので旅の途中、あるいは旅から帰って間もなくは、自分の中に驚きや感動がたくさんあって、僕は誰かにおすそ分けしたい気持ちに満ちています。そうした状態が、周囲から機嫌が良さそうに見えているのかもしれません。
毎年通っている住み慣れた街、歩き慣れた通りでも、いろいろな発見があります。新しい建物ができたり、行きつけの店のメニューが変わったり、道行く人に移民が増えたり。20歳の頃にパリを訪れた時は、英語がなかなか通じませんでした。でも今は多くの人が英語を話します。
フランス人も知らない地下鉄のルールを知れた
前回の旅はこんなことがありました。パリでは公共交通を利用するのにナヴィゴというICカードを利用するのですが、顔写真が載った裏面に小さな空欄があります。そこに自筆でサインをしなければならないのですが、僕はそれを知らず空欄のまま使っていました。
ある日、メトロの改札口に抜き打ち検査の係員が立っていて、乗車券の提示を求められました。僕がそれを見せると「サインがしてないね」と指摘されました。僕は外国人だしうっかりミスだから「次からは気をつけてくださいね」くらいで済むだろうという淡い期待もあったのですが、容赦なく50ユーロ、約8000円の罰金を言い渡されてしまいました。後日払いにもできるけれど、その場合は罰金が75ユーロに増額されるとのことでした。
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