負の感情に苦しめられない方法はあるのか。終末期にも心穏やかでいられる人たちに、そのヒントがある。緩和ケア医として2000人以上を看取ってきた萬田緑平氏に聞いた。

死も穏やかに迎えられる「しょうがない」の力

人生の最期に、怒りや焦り、妬みといったネガティブな感情を、上手に手放して穏やかに逝く人がいる。その一方で、最後の最後まで手放せず、苦しみながら亡くなっていく人がいる。同じように死を迎えるのに、なぜこれほど違うのか。緩和ケア医として2000人を超える方を看取ってきて、私はその分かれ目をずっと見てきました。

死を前にして穏やかでいられる人と、そうでない人のどこに差があるのか。私は「死にたくない率」の差なのではないかと考えています。

もちろん、死にたい人なんて一人もいません。みんな死にたくない。けれども、「絶対に死にたくない、100%死にたくない」と生にしがみつこうとする人と、「しょうがない」と死を受け入れられる人がいる。単に気持ちの問題のように見えるかもしれません。しかし、死を前にしたときには、その差はとてつもなく大きな違いとして表れます。

(構成=本誌編集部 イラストレーション=浅妻健司 図版作成=大橋昭一)