「コーヒーを飲む場所」が多様化した

筆者は、近年「カフェ」に対する消費者意識が大きく変わったと思う。理屈でなく、感性で行動する若い世代に顕著で、「ドリンクを座って飲めばカフェ」と考える人も目立つ。

大きな理由は「コンビニコーヒー」だ。2013年にセブン-イレブン・ジャパン(セブン)が仕掛けた「セブンカフェ」が成功し、初年度で4億5000万杯も出た。2018年は10億杯超に伸び、競合もコーヒーを強化した結果、コンビニコーヒーの市場規模は、2017年には推定2300億円台といわれる。喫茶店市場が1兆円規模なので、たった5年でその2割の規模に拡大した。

イートインできる店も増えたコンビニ店内のイスに座ってドリンクを飲む消費者は、無意識のうちに「小売店」ではなく、「カフェ」だと思っている。ファストフード店や低価格レストランもそうだ。ブログに「今日はこのカフェに行きました」と書き、ハンバーガーショップの画像を紹介する人もいた。

「コーヒーを飲む場所」が増えた時代は、消費者の意識も多様化するのだ。

下町の「昭和レトロ喫茶店」に起きている変化

一方で興味深い話もある。「昭和レトロな喫茶店」が若い世代に支持されているのだ。

8月と9月、東京・上野の老舗喫茶店を訪ねた。8月は「珈琲 王城」、9月は「喫茶 マドンナー」に行った。いずれも当地で半世紀以上続いている店だ。統計をとったわけではないが、長年続く喫茶店が多いのは東京の下町、中でも上野と浅草だと思う。

撮影=高井 尚之
上野にある喫茶店「珈琲 王城」

入店した2店とも、店内には若い客が多かった。インスタ映えをねらい、ドリンクやフードを撮影するのでもなく、思い思いに過ごしている。店主に話を聞いたが、「近年、外国人とともに増えている」という。今年筆者は、雑誌『東京人』(都市出版)の「純喫茶宣言!」特集号にも寄稿したが、若い世代の純喫茶好きを裏付けるシーンだった。

名古屋の老舗喫茶店では、ナポリタンスパゲティが、週末には200食も出る店がある。「かつてのイタリアンブームの頃は、古くさいと思われて1日数食しか出なかったが、昭和レトロ人気になってからは、安定して出ている」と経営者は話していた。

こうして考えると、カフェや喫茶店の総数が減って廃業が多いのは事実だ。だが新規開業も多く、やり方次第で活性化できる要因もありそうだ。筆者もノスタルジーではなく、「消費者心理」の象徴として、店の動向と向き合いたい。

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