店舗は減っているのに、コーヒー輸入量は拡大

令和元年も4カ月を過ぎたが、平成時代に「喫茶店」(カフェを含む)の店舗数は半減した。総務省統計を基にした全日本コーヒー協会のデータで示すと、以下となっている。

・「12万6260店」1991(平成3)年
・「6万7198店」2016(平成28)年

店舗数の過去最高は1981(昭和56)年の「15万4630店」で、以後、店は減り続けた。

一方、コーヒー業界は拡大しており、例えばコーヒー輸入量は、直近の2018年は45万2585トン。この数字は1980年の2倍以上で、2000年に40万トンの大台に乗ってからは、19年連続で40万トン超だ。(いずれも生豆換算の合計。財務省「通関統計」を基にした全日本コーヒー協会の資料)。

つまりコーヒー輸入量は、1980年頃と現在では約2倍になったのに対し、喫茶店の数は逆に半減(約43.5%)となった。

最大の理由は「コーヒーを飲む場所」が増えたからだ。イートインも目立つ「コンビニコーヒー」が拡大し、レストランやファストフードもコーヒーは欠かせない。自動販売機や全国各地のカラオケボックスでもコーヒーは必需品だ。

昭和時代と令和時代では、取り巻く環境が激変した。ビジネスモデルで紹介しよう。

カフェ経営で直面する「FLRコスト」とは

少し専門的な話になるが、飲食店の経営指標の1つに「FLRコスト」がある。

「F」はフードコスト(原材料費)、「L」はレイバーコスト(人件費)、「R」はレンタルコスト(地代家賃)を指す。優良ビジネスとしては「FLRコスト70%未満」が理想だ。

撮影=高井 尚之
東京・上野にある喫茶店「喫茶 マドンナー」

例えば東京都心では、アルバイトの時給=1000円の時代だ。人件費(レイバーコスト)を抑えるためには、店主やその家族が店に入る必要がある。建物を所有していなければ家賃(レンタルコスト)もかかる。商品単価の低いカフェが利益を上げるためには、例えばネット通販でコーヒー豆を数多く売るなど、さまざまな工夫が必要だ。

喫茶王国と言われる愛知県では、中心部を離れると一軒家の喫茶店も多い。これを自家所有していれば家賃は不要で、家族経営していれば人件費も抑えられる。実際、筆者が子ども時代に通った喫茶店4軒のうち、今でも2軒が健在だ。以前、その1軒に話を聞いたが、両親が創業した店を娘(1955年生まれ)が継ぎ、その娘(創業者の孫)も手伝っている。