今年に入り打ち出した2つの新プロジェクト
あの「スターバックス」が、新たな“プロジェクト”で攻めている。いずれも好調だ。
例えば、2月28日に東京・中目黒にオープンした「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」(以下「ロースタリー」)は都内の新観光名所となった。桜の名所である目黒川のほとりという立地もあり、満開の季節には入店するまで「6時間以上待ち」だった。
また、5月15日から期間限定で「スタアバックス珈琲」も訴求。こちらは新店舗ではなく、既存店に簡単な看板を掲げ、「プリン アラモード フラペチーノ」などのメニューを取り入れた。レトロな喫茶店の人気メニューであるプリンアラモードに、同社独自のフラペチーノをアレンジしたものだ。これ以外に「ウィンナー珈琲」なども販売した。
「『スタアバックス珈琲』は、平成から令和に元号が変わる時に、長く愛された良いものを振り返りたい。日本の若者にレトロを楽しむブームが来ているのもあり『Brand New Retro』というテーマを掲げました。古くからの文化に敬意を払いながら、新たなものに生まれ変わらせ、未来に伝えたい思いも込めたのです。SNSなどネットでの反応も良く、売れ行きも好調でした」(スターバックス コーヒー ジャパン・広報担当)
なぜ日本人は、ここまでスタバが好きなのか? 取材結果も踏まえて分析してみたい。
中目黒の新店はまるでテーマパーク
筆者は、著書『日本カフェ興亡記』(2009年、日本経済新聞出版社刊)の取材開始時から、スターバックスを見てきた。同書で紹介した当時の店舗数は841店(2009年2月末時点)で、首位の「ドトールコーヒーショップ」の1138店(2008年8月末時点)に次ぐ2位だったが、店舗数は約300店、ドトールより少なかった。
それが現在「スタバ」の国内店舗数は1434店(2019年3月末現在)もあり、2位の「ドトール」(1111店。2019年4月末現在)を、逆に300店以上も引き離す。船でいえば巨大艦隊だが、悠然と進むのではなく、さまざまなチャレンジをするのが興味深い。
長年見てきて感じるのは、「上から目線」と「横から目線」の使い分けだ。
例えば「ロースタリー」は存在感を含めて「上から目線」だ。2014年、米国・シアトルに同業態1号店がオープン。その後、中国・上海、イタリア・ミラノ、米国・ニューヨークに次ぐ5号店として東京に開業した。道路の一角に突き出るようにそびえる建物も壮観で、上空から見ると豪華客船のようだ。
メニューの内容もユニーク。例えば同店にしかない「ゴールデン スカイ ブラックティーラテ」(950円+税。ブラックティーにターメリックやカルダモンでスパイシーな風味をつけたティーラテ)には“黄金のわたあめ”(ターメリックシュガー製)が乗っている。