15期連続で営業収益(売上高)が過去最高を更新する「無印良品(MUJI)」を運営する良品計画。2019年4月にオープンした「無印良品 銀座」はMUJI Diner、MUJI HOTELも併設され注目を集める。『小売再生』の著者ダグ・スティーブンスが金井政明会長に好調の秘訣を聞く。

MUJIはなぜ、世界のミレニアル層に人気か?

【ダグ】新しくできた「無印良品 銀座」に伺いました。驚いたのは、ターゲット層を定めているわけではないのに、結果的にミレニアル世代の世界観に合ったお店になっている、ということです。ミレニアル世代は単に買い物をする場を求めているわけではなく、買い物以上の体験を求めている。なぜMUJIは、世界のミレニアル世代に支持されるのでしょうか?

良品計画 会長 金井政明氏

【金井】確かに米国でも英国でも、中国でも、ミレニアル世代の若い人たちが無印良品を支持してお店に来てくれています。中国の若い人たちの声を聞くと無印良品に対して、シンプルで、デザインがよくて、品質がよくて、平等だと言ってくれている。「平等だ」と言ってもらえるのは嬉しい。若い層は、やはり意識が変わってきている、メッセージが伝わっているというふうに私も感じています。ダグさんがそうおっしゃるということは、米国でもいけますかね(笑)。

【ダグ】いけると思います。いま、米国の小売りの現場は、オリジナリティがなく、どこを見ても似ている状態に陥っています。そうした中で、米国の消費者たちは、無印良品のように世界観が確立されているものを求めている。無印良品の一貫したデザインを生み出すインスピレーションの源はどこにあるのでしょうか?

【金井】デザインということで言えば、おそらく世界中を見渡しても、無印良品のように、生活の全領域を1つの思想でデザインしている会社はほかにないのではないかと思っています。

私たちはまず「最良の生活者」の像を探します。たとえば、自然との関係、エネルギーの問題、これからの食糧問題や水問題、あるいは生産者のこと。自分だけではなく、自分と関わりのある、そうしたことと自分との関係を考えたとき、「どんな生活、暮らしをすることが望ましい生活者なんだろう」ということを、まずは哲学的に探求するのです。

いま、マイクロプラスチックによる海洋汚染が深刻だ、と言われるようになり、多くのメーカーがペットボトルの代替素材となる土に還る樹脂を開発しようとしています。それに対して、我々のアプローチ、考え方は少し違います。「人間が今後さらに増えていくというときに、便利だからとペットボトルを使うライフスタイルを続けていていいのだろうか」と考え、議論するのです。「それなら家で飲み物をつくって、持ち運べる簡単な容器をつくろう」ということになるわけです。そんなことを、フランクに雑談しながらやっているのが良品計画という会社です。