他業種から農家になる人がじわりと増えている。農林水産省の調査によると、2017年に他業種から就農した49歳以下の人数は10年前の3倍にのぼる2710人になっている。しかしそうした転身が成功するとは限らない。会社員から専業農家に転じた有坪民雄氏は「経営計画書がなければ、就農は失敗する」という――。
会社員から専業農家に転じた有坪民雄氏(画像提供=有坪民雄氏)

農業を始めるなら「支援機関」と相談するのがベスト

新規就農する方法は大きくわけて3つがある。

①就農支援機関と相談しながらやる
②農家(家業)を継ぐor農家に嫁(婿)入りする
③独力で就農する

これらの中で、筆者がおすすめするのは、「①就農支援機関と相談しながらやる」である。「②農家(家業)を継ぐ、農家に嫁(婿)入りする」を、自ら好んで選ぶことは容易ではない。そもそも農業人口が少ないのでパートナーになる人を見つけ、愛し合う存在になれる確率が低い。また、就農の安全度を考えれば、「③独力で就農する」はリスクが大きすぎる。したがって、ほぼ①の一択と考えてもいいかもしれない。

では、①の方法で新規就農するにあたって、考えるべきことはなにか。それは、「2人」の心を動かすことである。

その1人目は「就農支援機関のアドバイザー」である。就農支援機関とは、新規就農相談センターや普及指導センターなどの名前で呼ばれる各地域に設けられた官営農業コンサルタントのようなものである。彼らは担当地域の農業に詳しく、栽培ノウハウから農地の紹介、経営的アドバイスなどを総合的に行ってくれる存在である。

農家になることを「家族」に説得できるか

そんなアドバイザーを味方につけることは、非常に重要だといえる。なぜなら彼らは新規就農者を支援する際、「相手を選んでいる」からだ。「この人ならきちんとここのエリアで農業をやっていけそうだ」と思えた人しか相手にしないのである。

2人目は「家族」である。特に地方への移住を伴う就農の場合、家族の理解は不可欠である。もちろん独身者で、親の介護問題などの心配がいらない人ならば別であるが、パートナーがいる、子どもがいる、同居する高齢の親がいるといった場合には、家族への説得は避けては通れない。

当然のことながら、いきなり「農家になる!」と宣言しても「何バカなことを言いだすの?」と一蹴されて終わりである。一般の人にとって、「農家になる」のは、「小説家になる」「芸術家になる」と同じで、簡単になれるものではないし、なれたところで食べていける確率は低いと思われているからだ。都会育ちの人は、田舎で暮らすことに抵抗感を持つ人も多いはずだ。