いきなり「農業をしたい」では説得できない

ただ、絶対に「説得」できないパターンは、間違いなくある。それは、本当に突然、思いつきのように説得を始めることだ。相手も心の準備ができていないうえに、なぜそんなことを言いだしたのかわからないため、パニックを引き起こすこともある。

逆に、パートナーに「いずれ農業をしたいと言い出すだろうな……」と日々の生活のなかで感じるさせることができていれば、話を真剣に聞いてくれる可能性は高まるだろう。

農業に興味があることを匂わせるには、実際にいろいろ調べる姿を見せる必要がある。そして、いきなり農業やりたいというのではなく「いや、ひょっとしたら農業で食べていけないかな? と思って(笑)」と、半分冗談のようにぼかしてもいいかもしれない。

そして農業の本を買ってきて読んだり、家庭菜園を借り、休日や早朝に自分で栽培した野菜を笑顔で家に持って帰ったりする。そんなふうにしていると、「いずれこの人と一緒に田舎に移り住んで農業をすることになるかもしれない」くらいの想像はするだろう。

「経営計画」はパートナーの心も動かす

そのうえで「将来農業をしたいけども、食うのは難しいよな?」と言いながらも、一生懸命に農業のための「経営計画」を作っている姿を見せることができれば、「この人は何も考えずに農業したいと言いだすわけじゃない。慎重に、真剣に考えている」と思ってくれるはずだ。

有坪民雄『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』(プレジデント社)

そうした姿をきちんと見せてから、「本気で農業したい。この計画だとなんとかなりそうだ」と相談すれば、パートナーも真剣に話を聞かざるを得ないだろう。

この経営計画には、栽培スケジュールや向こう数年間の資金繰りも含まれている。だから、実際にどんな生活になり、そこからいくらの収入が得られるのかが見えてくる。もちろんすべてが計画通りにいくわけではないが、生活スタイルがどのように変わるのか、イメージすることは可能であろう。

いずれにしても、今の会社員生活とオサラバし、農業という新たな仕事と生活スタイルに移行しようと思うのならば、まずは「経営計画」を作る必要がある。そして、その経営計画をもって、2人の心を動かすことである。それができれば、農業への転職は、かなり現実味を帯びてくるといえる。

有坪 民雄(ありつぼ・たみお)
専業農家
1964年兵庫県生まれ。香川大学経済学部経営学科卒業後、船井総合研究所に勤務。94年に退職後、専業農家に転じ、現在に至る。1.5ヘクタールの農地で米、麦、野菜を栽培するほか、肉牛60頭を飼育。著書に『農業に転職する』(プレジデント社)、『誰も農業を知らない』(原書房)、『農業で儲けたいならこうしなさい!』(SBクリエイティブ)、『イラスト図解 農業のしくみ』(日本実業出版社)などがある。
(画像提供=有坪民雄氏)
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