「経営計画書」を作れるかが成功を左右する

就農支援アドバイザーに「この人ならきちんとここのエリアで農業をやっていけそうだ」と思ってもらうために必要なのが、「経営計画」であり、それを文書化した「経営計画書」である。

この「経営計画書」を作るには、それなりの知識や努力を必要とする。(経営計画書の具体的な作り方については、拙著『農業に転職! 新規就農は「経営計画」で9割決まる』で詳述したので参考にしてほしい)

言い換えると、適切な勉強を行い、しっかりとした経営計画書を作ることができれば、就農支援機関からのサポートも受けられ、成功しやすくなるということがいえる。

なぜ経営計画書が重要なのか。そのことを理解していただくために、まずは次の就農希望者Aさんと、就農支援機関のアドバイザーBさんの会話を読んでみてほしい。

就農希望者Aさん「(農業で)苦労するのはわかっています。でも、やりたいんです」
就農支援機関アドバイザーBさん「どんな作物をやりたいのですか?」
Aさん「イチゴをやりたいと思っています」
Bさん「どの程度の経営規模で考えているのですか?」
Aさん「ハウスを3つ作りたいです。普通に出荷するのとジャム用とかアイスクリームに適した品種を分けて栽培したいと思っています」
Bさん「人を何人雇われるのですか?」
Aさん「最初は1人で。それから徐々に規模を大きくします」

「ハウスを3つ」はどれくらいの面積か

Bさん、つまりアドバイザーはAさんが「ハウスを3つ作りたい」という発言を聞いたところで「これはダメかも?」と思い始め、「最初は1人」と言ったところで断り文句を考えるようになる。

なぜか?

「就農したい」という夢や希望だけで、数字の裏付けがないからだ。はっきりいって、勉強不足が丸出しであるといえる。

こう書くと「ハウスを3つと言っているじゃないか。それに6次産業化のことも考えて言ってるじゃないか」と反論したくなる人がいるかもしれない。そんな人のために解説しよう。

「ハウス3つ」というのは、正しい規模を表していない。どの規模のハウスなのかわからないからだ。

小さなハウスだと10坪くらいのものもあれば、大きなものになると200坪、300坪を超えるものもある。どの規模でやるのかと聞かれたときに言わなければならないのは、ハウスの数ではなく栽培面積。すなわち、20アールとか1町歩(約1ヘクタール)と答えなければいけないということだ。

「最初は1人」と言ってダメなのは、イチゴは相当手がかかる作物だから。だいたい10アールの面積でイチゴをやろうとすると、地域や作型によるが、年間労働時間は2000時間前後になる。