住まいを探す時は何に注意すべきか。クラフトバンク総研所長の髙木健次さんは「マンションを購入する場合は『目に見える内装のきれいさ』だけでなく、保険契約や管理組合の運営状況もチェックしたほうがいい。また、立地で重要なのは『地歴』だ」という――。

※本稿は、髙木健次『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

崩れた地面に埋まりかけているミニチュアの家
写真=iStock.com/flyingv43
※写真はイメージです

避けては通れないマンションの大規模修繕

「マンションの大規模修繕が進まない」というテレビや新聞での報道が増えています。

本稿では株式会社さくら事務所にお話を伺います。同社は個人向けのホームインスペクション(第三者による住宅診断)やマンションの管理組合向けのコンサルティング事業を展開しているほか、NHKドラマ『正直不動産』の監修もしています。

大規模修繕工事はマンションの規模によっては数億円単位(一戸あたり100万円以上)になることもあるマンションの一大イベントです。同社はマンション管理組合に対し、大規模修繕の施工会社選定や、工事中の巡回施工チェックなどをサポートしています。

国交省の調査では築40年以上経ったマンションの4割近くが外壁の剥落、漏水や雨漏りなどの問題を抱えています。マンションの維持管理費は管理会社への業務委託費などに充当する管理費と、修繕を行うために積み立てる修繕積立金の2つに分かれます。

「2つの老い」によって費用が不足する

国交省のガイドラインでは外壁などの大規模修繕は12~15年に一度行うことが望ましいとされており、2024年現在は、2008年ごろに建設されたマンションが1回目の大規模修繕を迎える時期です。それ以前のバブル期に建設されたマンションは2~3回目の大規模修繕を迎えていることになります。

さくら事務所によれば、新築販売時の修繕積立金の設定額は1回目の大規模修繕費用をもとに算出されていることが多いので、1回目の大規模修繕でお金が足りない事態にはなりにくいそうです。

しかし、2回目以降になると建物や設備の劣化が進んで修繕箇所が増える上に、住民が高齢化・定年退職により収入が減っていることが多いため、修繕積立金の増額に対応できないことがあり、修繕費用の不足が起きやすくなります。

マンションは時間とともに外壁などの建築部分だけでなく、給排水管や機械式駐車場、エレベーターなどの設備系統も劣化していきます。この建物と住民の老いは「2つの老い」と言えるでしょう。