※本稿は、髙木健次『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
定年後の年収ダウンが他業界より少ない
本稿では、建設業界の給与の4つの特徴を解説します。
① 手に職 若い時から稼げて60代以降も下がりにくい
建設業の世代別平均年収を見ると、20~30代は製造業など他産業を上回り、40~50代で製造業に抜かれるものの、60代以降の年収が下がりにくい特徴があります。
「手に職」と言われますが、技術と資格があれば若いうちから稼げて、サラリーマンのような「役職定年による年収の大幅ダウン」が少ないのです。言い換えると年功序列色が薄い、実力主義の世界とも言えます。
収入を支えている「残業」で悲劇も
② 年収に占める残業代の比率が高い
年収に占める残業代・休日手当の比率が他産業より高いのが建設業界の特徴です。賞与を含む年収の10%前後が残業・休日手当です(※)。
※厚労省「2022年賃金構造基本統計調査」
施工管理は建設業界の中でも特に残業時間が長いです。厚労省のガイドラインで過労死のリスクが高まるとされる「月80時間残業をしている社員が一人でもいる事業所の比率」を見てみると、施工管理で33%、職人で22%です。
これは事業所単位の集計なので「社員全員が長時間残業をしている」わけではありません。実際は特定の数名に残業が集中していることが多いです(※)。
※厚労省「2018年過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究」
特に大手、建築の現場の施工管理ほど残業が長時間化しやすくなります。これは関わる会社数が増え、調整や発注業務が複雑化し、作成書類が多くなるためです。県と市で書類の書式が違うなどの行政側の問題もあります。
職人たちが定時で帰った後に施工管理は残業で書類仕事、というケースも多いです。2021年にはゼネコン最大手の清水建設の男性社員が過労自殺する、痛ましい事件が起きています。
土木の現場の施工管理の残業は長時間化しにくいものの、建築と比べ、屋外の業務が多くなります。