【田原】つまり、わかりやすくしてハードルを下げたわけね。

【神田】はい。講談界には、この人を最初に聴くとすんなりハマれるよという“呼び屋”がいませんでした。僕は未熟ですけれど、役割としてそれをやろうとしたことで評価していただけるようになったのかなと。

大人気、ラジオ番組の裏側

【田原】松之丞さんのラジオも聞きました。とっても面白い。昔、評論家の山本七平は「日本は空気の国で、空気を破ったらおしまい」と言ったけど松之丞さんはどんどん破ってる。

【神田】いまは何か言うとすぐ炎上してクレーマーに睨まれるから、メディアで言いたいことを言えなくなっているでしょう。でも一方で、「せめてラジオくらいは本音が聞ける場にしてくれよ」というリスナーもいる。幸い、僕は講談で生きている人間なので、ラジオでは言いたいことを遠慮なく言える。そこがウケているんじゃないですか。ただ、最近は僕が講談のアイコンのようになっていて、僕が人の悪口を言うと、講談自体にダーティーなイメージがつきかねない。呼び屋としてはそれもよくないので、これからは微妙な隙間を縫ってやっていこうかなと。

【田原】なるほど。あくまで講談を聴いてもらうための入り口としてラジオをやっているわけですね。

【神田】僕はラジオやテレビで名刺を配っていると思っています。もちろんラジオやテレビも楽しいけど、本丸が崩れると意味がない。あくまでも講談に来てもらうための宣伝としてやっています。

【田原】松之丞さんは2020年の2月に真打ちになる。真打ちになると芸も変わりますか?

【神田】内容は変わりませんが、気持ちは変わるでしょうね。誰かが言っていたんですよね。木刀と真剣の違い。真剣は、いざとなったらお客さんをバンッて切るくらいの力がある。そういう意味で責任は重いです。

【田原】真打ちになった後の目標は何ですか?

【神田】いずれ講釈場という講談専門の寄席をつくりたいですね。講釈場を回すには少なくても東京だけで200人の講談師が必要で、新しく講談師になる下の世代が食っていくには、もっとこの世界にお客を増やさないといけない。真打ちは花火のようなもの。人に知られる機会は増えるので、呼び屋としてより精力的にやっていきます。

【田原】いま講談師は何人くらい?

【神田】いま東京、大阪合わせて約90人です。一番少なくて22人でしたから、だいぶ増えました。でも、講釈場復活にはまだ足りない。講談師はすぐに育たないので、若いやつがバイトしないで一生懸命稽古に打ち込める環境をつくるのが当面の目標です。

【田原】真剣勝負、期待しています。

神田さんへのメッセージ:講談を落語に負けない人気の伝統芸能にしろ!

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩、枦木 功)
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