精巧な穴加工技術を持つ岐阜・可児市のダイニチは過去5期で売り上げが6割近く上昇している。確かな技術を持ちながら、それが利益に結びついていたとは言い難かった同社が、なぜ驚異のV字回復を遂げたのか。兵庫県立大学大学院の中沢孝夫客員教授が解説する。
髪の毛より細い穴を正確に開ける技術
製造業に従事する中小企業の多くは、部品や素材を加工するBtoB。一般の消費者には馴染みが薄いが、それで重要度が下がるわけではない。
ここで紹介するダイニチもその1つだ。“吹けば飛ぶよな”極小の部品を作る同社の現場を見ていると、その超微細・精密な加工能力に驚く。
例えば、現代医学に欠かせない医療機器である極細の管・カテーテル。その部品の直径0.5ミリの素材に開けられた0.02ミリの穴――髪の毛よりずっと細い穴を滑らかに正確に開ける技術は、ダイニチの真骨頂の1つだ。
機械組み立ての下請けだった約30年前、精密加工の独自技術をさらに極めれば武器になる、と気付いたのは当時の下村尚之社長(現会長)だ。きっかけは、ふと見かけた盆栽だった。「小さくできる技術には付加価値がつく。これこそが日本が世界で勝負できる技術だ」と閃いたという。