第三極の存在を知らしめたのは、亀井静香氏だろう。少数政党ながら民主党の混乱に乗じて次々と国民新党の政策を実現させている。「第三極」とはどういうものかを熟知している。一見、ずぼらなようでなかなかの策士だ。「うちのような小さな政党が、半年あまりで小泉政治を片っ端から引っくり返しているわけですよ」。キャスチングボートを握っているという自負がある。
「相手の懐にすっと飛び込んでいってね。短刀を突きつける。ライフルをヘタに撃ちまわすよりもよっぽど効果がある。こっちは必死でやっているんだよ」
同じ第三極でも存在感をあまり発揮できなかった社民党、そして自公連立政権時の公明党を念頭にした発言だろうか。最近の「第三極狙い」の新党乱立も亀井氏の存在感に理由がある。
参院選でどう戦うのか。「うちは『湊川の戦い』でいきますよ」。南北朝時代の1336年、九州から東上した足利尊氏の軍と楠木正成らとの戦いである。
「足利軍10万の大軍を正成が800騎で迎え撃ったようにやるんですよ。誰を敵に戦うといったら、自民党でもなければ有象無象の新党でもなければ、もちろん民主党でもない。盲めしいたる民を敵に戦うんですよ」。「盲いたる民」というのは『昭和維新の歌』の一節。「ああ人榮え國亡ぶ 盲いたる民世に踊る 治亂興亡夢に似て 世は一局の碁なりけり」。
憂いと闘志とが入り混じった顔を向けてきた。「国は栄えながらも滅びの道を辿っているのが現状です。私たちはメディアやなにもわかっていない国民に迎合するような政策は打ち出さない。盲いたる民の目をひんむかせる。これがうちの戦い。あとは何もない」。
政策は「郵政改革」「日本郵政グループ非正規社員の正社員化」など。「私は郵政族じゃないよ。これまで11回選挙をやってきたけど、郵政が応援してくれたのは昨年夏の衆院選だけですよ。
私自身、京浜東北線に飛び込もうと思ったことがある。従業員を人間扱いしないで安く使って儲ければいいという経営者の考えがいかんと言うんだ。働く人の立場に立って雇用形態を考えていく。単純に非正規を正規にするわけではない。郵政だけのことではなく全部、連動しているんですよ」
民主党は参院選後も国民新党との連立維持で合意した。亀井静香代表の活躍はつづく。