(1)『近代世界システムI・II』 I・ウォーラーステイン・著 岩波書店
…資本主義の生成を描く大著。15世紀に始まった世界システムを、ヨーロッパ世界経済の展開過程として捉えた。原著は74年刊。
(2)『民主主義の終わり』 ジャンマリ・ゲーノ・著 講談社
…資本主義の“双子の兄弟”主権国家が力を失い、見えない「資本の帝国」の時代に移ると主張。原著は93年刊で、EUの形成とも重なる。
(3)『定本 想像の共同体』 ベネディクト・アンダーソン・著 書籍工房早山
…国民国家が形成される過程を分析。ナショナリズム研究の必読書とされる。衰え始めた国民国家の先行きを考える際に有益である。
(4)『地中海I~V』 フェルナン・ブローデル・著 藤原書店
…近代世界システムの誕生期を描いた名著。前出の『近代世界システム』と併読すれば、400年に及ぶ資本主義の歴史の大略が掴める。
(5)『ローマ劫掠 1527年、聖都の悲劇』 アンドレ・シャステル・著 筑摩書房
…世界の首都・ローマが急襲された「ルネッサンス期の9.11テロ」。宗教改革を経た資本主義誕生の前夜を描写。
(6)『ヨーロッパ中世の社会史』 増田四郎・著 岩波書店
…近代資本主義が誕生する以前の中世ヨーロッパ。その社会経済面での構造史的な変化と特質を平易に記す。
(7)『新自由主義 その歴史的展開と現在』 デヴィッド・ハーヴェイ・著 作品社
…“小さな政府”“民営化”“規制緩和”を掲げた新自由主義が発生し、各国に浸透していった30年史を追う。
(8)『追跡・アメリカの思想家たち』 会田弘継・著 新潮選書
…多種多様なアメリカ思想の系譜。過去400年とは違うレールをアメリカが走ろうとした理由を探る一助に。
(9)『「アメリカニズム」の終焉』 佐伯啓思・著 TBSブリタニカ
…「アメリカ的」文明、アメリカの経済的覇権の危険性を指摘し、グローバリズムを批判する。98年初版刊行。
(10)『近代性の構造 「企て」から「試み」へ』 今村仁司・著 講談社選書メチエ
…「時間と機械の精神が支配する」近代社会とは何かを問う。『ヨーロッパ中世~』を除いた前出の8冊を包括。
(11)『同時代も歴史である 一九七九年問題』 坪内祐三・著 文春新書
…79年のイスラム革命、ソ連のアフガン侵攻を境に世界がそれまでとは“違うレール”を走り始めたことがわかる。
(12)『不平等社会日本』 佐藤俊樹・著 中公新書
…“努力すれば何とかなる”社会は85年前後まで。95年以降は父子の職が一体化……等々「階級社会化」が閉塞感を生む。
(13)『戦後の思想空間』 大澤真幸・著 ちくま新書
…オウム事件のあった95年に戦後は終わり、新たな「戦前」に入った、としてオウム真理教と昭和初期の大本教を重ねる。98年刊。
(14)『現代社会の理論』 見田宗介・著 岩波新書
…情報化・消費化社会というシステムが、それまでの「近代」市民社会とは明らかに違う、まったく新しい時代を画するという。96年刊。
(15)『優しい経済学 ゼロ成長を豊かに生きる』 高橋伸彰・著 ちくま新書
…「失われた10年」で日本の経済社会が失ったものとは? 『数字に問う日本の豊かさ』(96年刊)の後編。

(西川修一=構成 永井 浩=撮影)