よく噛んで食べるほうが、頭が良くなる。歯が残っているとボケにくい。そんな「おばあちゃんの知恵袋」のような話が、近年、科学的に実証されはじめている。

小野卓史・東京医科歯科大学大学院教授は、歯、舌の活動をはじめとする口の中の機能が、脳や全身の活動とどう関係するかについて研究。2018年には、歯科医学の国際雑誌「Journal of Dental Research」で、1年間に掲載された中で最も優れた論文に与えられる「IADR/AADR William J. Gies Award」を受賞した。口の中の動きや状態が脳にどのような影響を与えるのか。脳科学者の茂木健一郎氏が小野教授に訊ねた――。

歯がなくなったら、何をしたらいいか

【茂木】脳と口の中の関係という小野先生の研究は、脳科学の視点からも、健康で長生きしたいと願う普通の人間の感覚としても、非常に興味深いですね。