「乳腺外科医わいせつ疑惑」事件で発覚したヤバい案件
2016年5月、東京・足立区の病院に勤務する男性外科医のA医師(43歳)が、30代の女性B子さんの乳房の右胸から乳腺腫瘍を摘出する手術をした後、その女性の胸を舐め回し、自分の股間を擦った、などとして、同年9月に準強制わいせつ罪で起訴され、100日以上も身柄を拘束された。
検察側は「主治医としての信頼を逆手に患者の身体を欲望の赴くままにもてあそび、反省が見られず再犯の可能性がある」として懲役3年を求刑し、弁護側は「女性は手術後の譫妄(せんもう)状態にあり幻覚を見ていた」として無罪を主張し、全面的に対決した。
この事件に関して、報道直後から医療界では大きな話題となった。
「全身麻酔後による幻覚だったのでは?」
「これが有罪なら、男性医師は女性を診察できない」
筆者のまわりでは「医師に非はなかった」との意見が大勢を占め、筆者も同じ考えだった。
東京地裁の無罪判決に検察は控訴した
2019年2月、東京地方裁判所が胸を舐められたとする女性の証言について「迫真性に富み、一貫性もあるが、麻酔の影響で幻覚を体験した可能性がある」と無罪を言い渡した。これで一件落着と思いきや、3月に入り、東京地検が判決を不服として控訴する方針を固めたと報道された。
本件の法的問題点や解説は、多くの専門家やジャーナリストがすでに述べているので割愛する。医師として気になるのは、患者B子さんは、裁判の中で「この事件は冤罪なんかじゃない。A先生、あなたは性犯罪者です。医師免許剥奪は当然のこと、今まであなたが楽しんだ分の長い長い実刑を望みます」と訴えていることだ。
2月の地裁判決後の記者会見でもB子さん側の弁護士は「無罪が出て、本当にびっくりしている」「この事件で無罪になったら性犯罪は立件できない」などと述べ、判決を批判している。そして、今でもB子さんは主治医によるわいせつ行為を「真実である」と確信しているという。
医学的には、このようなリアルな幻覚はよくあることなのか?