9文字×6行の極小原稿用紙に書かれた、「54字の物語」が話題を集めている。純愛物語やホラー、巧妙なSF仕立て、反対の行から読んでも意味が通じる……。少ない文字数ながら、いや短すぎるゆえに楽しまれている。この超短編小説ブームを仕掛けたのは、『意味がわかるとゾクゾクする 54字の物語』(PHP研究所)の著者である氏田雄介氏。仕掛けのポイントはどこにあったのか。本人が解説する――。

1話54文字の超短編小説がブームに!?

突然ですが、この物語の意味、わかりますか?

先日研究室に送ってくれた大きなエビ、おいしかったよ。話は変わるが、例の新種生命体のサンプルはいつ届くのかね?

ある博士が、研究室に送られてきた甲殻類型生命体の貴重なサンプルをグルメギフトと間違えておいしく食べてしまった……というお話です。

「54字の物語」は、1話がたった54文字で構成された新しい文章表現のスタイルです。筆者がインスタグラムに投稿していた「インスタ小説」シリーズに書き下ろし作品を大幅に加え、2018年の2月に『意味がわかるとゾクゾクする 54字の物語』として出版しました。

書籍にも収録されている作品をいくつかご紹介しましょう。

工場で働くロボットを監視して仕事ぶりをチェックする仕事を始めた。最近どうも誰かに見られているような気がする。

近未来SF系。自分が監視していると思ったら、自分も監視される側だった……というお話。

「今までにない斬新なアイデアを出してくれ」と言われて提案した企画が却下された。「前例がないから何とも言えん」

ブラックジョーク系。身に覚えのある人にとっては笑えないかもしれません。

登校時と下校時でカバンの重さは変わらなかった。今日は好きな人ができて初めてのバレンタインデーだったのになあ。

切ない系。好きな人に渡せなかった女の子の話なのか、誰からももらえなかった男の子の話なのか。

こんなお話を90話収録した本です。

5000人が参加した「54字の文学賞」

「54字の物語」が特に大きな話題を呼んだのは、読者からオリジナルの54字作品を公募した「#54字の文学賞」がきっかけでした。

このキャンペーンを通して5000点を超える作品が集まり、シャープ株式会社さんやJAXAさんなどの企業の方々や、プロの作家さんや漫画家さんも参加してくださり、たくさんの面白い作品が集まりました。

さらに募集期間が終わった現在も、ツイッター上には「#54字の物語」のハッシュタグで数万点を超える作品が投稿されています。