投稿作品の中で面白かったものを1つご紹介しましょう。

佐藤がタイムマシンに乗って、昔の自分の両親に会いに行ったらしい。未来が変わる危険もあるのに大丈夫かな、鈴木…(投稿者:@ShaTapirus さん)

なんと54字で語っている間に過去が改変されてしまいました。最後の3マスでオチをつけているのが秀逸ですね。

このように「54字の物語」は、読み手だけでなく書き手としても楽しめるところが大きな特徴です。

SNS時代の作品のつくり方

筆者(氏田雄介)はもともと面白法人カヤックというコンテンツ制作会社で、SNSを活用したプロモーションの企画を専門にしていました。そんな自分のバックグラウンドもあり、「54字の物語」は「SNS最適化」を意識してつくっています。

「SNS最適化」と言えるポイントは大きく分けて2つあります。ひとつは、SNSで読まれることを前提に情報をデザインしているところ。もうひとつは、情報の広がり方がSNS的であるところです。

この記事では、「54字の物語」の企画制作における狙いを、筆者がこれまでに広告やコンテンツの制作を通して学んだ知見と併せて説明していきます。皆さまが今後あらゆるコンテンツ制作やコミュニケーション戦略を考える上で、この記事が何らかのヒントになればうれしいです。

ビジュアルコミュニケーション時代の文章表現

まず「SNS最適化」のデザインについてお話しします。

ここ数年間で、インターネットでのコミュニケーションの中心は、テキストからビジュアルへと移行しました。若いスマホユーザーは、おいしいレストランを探すのにもインスタグラムを使っています。

また、タイムラインが毎分毎秒更新されていくSNSでは、そもそも「長い文章は読まれない」というのがコミュニケーションにおける前提です。どれだけ良いものをつくっても、1秒で理解できるようなビジュアルがないと、なかなか1歩先に踏み込んでもらえないのです。

そんな状況の中「ビジュアル中心のインスタグラムでテキストコミュニケーションを実現できないだろうか?」と考えました。「インスタ映え」という言葉の通り、インスタグラムはいかに画として映えるかが大事なメディアです。