そこで開発したのが「画像的なテキスト」です。インスタグラムの正方形の枠に収めたときに画像として映えて、スマホ上でも読める文字サイズで、最低限のテキスト情報が詰め込めるフォーマット。それが正方形の54字詰め原稿用紙だったのです。

▲過去に試作した「画像的なテキスト」の例。「英語交じりの四字熟語」と「カップ上のストーリー」

ルールがクリエイティビティを生む

次に、「SNS最適化」のもうひとつの側面「広がり方」についてお話しします。

ネット上のコミュニケーションの特性として「インターネット・ミーム」(ネット上で複製、改変を繰り返して広まっていくコンセプトのこと)という考え方があります。例えば、世界中のセレブたちを巻き込んで大きな運動になった「アイスバケツチャレンジ」や、多くのネットユーザーがコピペ・改変して広まった「大迫半端ないって」などがそれにあたります。

「氷水を頭からかぶる」「『××半端ないって』の××を変える」など、これらは一定の「ルール」をもとに波及していきます。単純明快なルールが人々の創作意欲を刺激し、自己表現の手助けをし、クリエイティビティを生むのです。

「54字の物語」では「54字詰めの原稿用紙いっぱいに物語を書く」というルールのもと、たくさんの作品が次々と生み出されました。このように「インターネット・ミーム」的なルールを人為的につくって成立させるために、押さえておきたいポイントが3つあります。

不自由さが発想を生む

ルールをつくる上で大切なポイントのひとつは、「制限」をつくることです。

例えば、インスタグラムには正方形という形状の制限、Vineには6秒という時間の制限、ツイッターには140字という文字数の制限があります。もしツイッターの投稿可能文字数が無制限だったら、何を書いていいかわからなくなってしまうのではないでしょうか。

アイデアや企画を仕事にしている人にはよく分かると思うのですが、自由な発想を生むにはある程度の制限が欠かせません。サーティワンアイスクリームのオーダーと「Beef or Chicken?」のどちらが早く決断できるかを考えるとわかりやすいかもしれません。

今回の例でいえば、54字“ぴったり”に収めなければならないというところが「制限」です。少ない文字数だと書ける内容が限られる上に、超過しても不足してもNGなので、必然的に使える表現は限定されます。この不自由さがアイデアの起爆剤になるのです。

また、厳しい制限があるからこそ、その制限をうまく利用するメタ的な面白さを持った作品が生まれるのもひとつの特徴です。

幸せになりたいの。/嫌よ、貴方と別々に/なんて…そんなの私/じゃないから。一生/私の愛する人は貴方/だから、お願い。(投稿者:@yukkemakki さん)

原稿用紙の特徴を利用して、右から読んだ時と左から読んだときに意味が変わる作品です。各所で話題になり、テレビ番組「サンデー・ジャポン」(TBS系列/2018年7月29日放送)にも取り上げられました。