2008年10月1日より「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が新たに施行された。

日本経済の発展は、今も昔も中小企業が支えてきた。この事実に異論を唱える人はいないだろう。国内に経営の本拠を構える約150万社のうち、じつに99.2%を中小企業が占め、わが国の労働者雇用の約7割を担っている。パソコンや携帯電話がこれだけ小型化したのも、中小零細企業が有する技術力の賜物だ。

これら中小企業は、ほとんどが「オーナー企業」であって、社長はその個人資産の大半を自社株や事業用設備に投入している。所有と経営がほぼ一致する「一国の城」において、その主の存在感は、内部的にも対外的にも非常に大きい。大企業のそれの比ではない。

この国の高度経済成長期を力強く乗り切ってきたカリスマ経営者は、高齢化している。しかし、世代交代があまり進んでおらず、自らの代での廃業を検討せざるをえない現状にある社長は多い。

現に、年間約29万社(2001年以降の4年間の平均)が廃業に追い込まれており、うち4分の1が「跡継ぎ不在」を廃業理由に挙げている。親族、ことに息子や娘婿が中小企業の後継者となる割合は、20年前で全体の8割を占めていたが、現在は4割ほどにまで減った。

ひとつの企業が長年かけて築き上げてきた信用、得意先の人脈、高度な技術力、営業ノウハウなどは、かけがえのない資産であり、それを簡単に無に帰してしまうのはもったいないところだ。先代と血縁関係にある2代目社長は、従業員や取引先から「苦労知らずのお坊ちゃん」という偏見、色眼鏡で見られてしまう運命にあるのは、避けられない。また、初代のただならぬ苦労を肌で感じており、しかも職業の選択肢が多様化している時代でもあり、「親の跡を継ぐ」という覚悟を抱きづらい状況にあるのだろうか。

かといって、赤の他人に会社を全部くれてやるのは心情的に忍びない。どんなに優秀な人材であろうと。そこで、中小企業を親から子へ手渡す「相続」を支援すべく、「経営承継円滑化法」という新法が一肌脱ぐことになった。